世界でいちばん、君に届かない

 整った顔立ちに隙のない立ち居振る舞い。親切なのに、どこか近寄りがたかった。それが今では、朝から私の遅刻歴を持ち出して楽しそうに笑っている。

 人は見かけによらない。主に、口の悪さが。

「ところで澪、今日の放課後は空いてる?」

「えっ、どうして?」

「少し付き合ってほしいんだけど」

「……怜央くん」

「うん?」

「そういう言い方すると、女子が勘違いするよ?」

 彼は一瞬だけ目を丸くして、それから優雅に微笑んだ。

「澪は勘違いしてくれないの?」

「しません」

「残念」

「絶対、残念だと思ってないでしょ」

「どうかな」

 こういうところだ。自分の顔が人に与える影響を、少しは考えてほしい。いや、わかっているから困るのかもしれない。

「生徒会の広報写真について、相談したいことがあってね」

「あ、そっち?」

「何を期待したの?」

「何も期待してません!」

「まだ何も言ってないよ」

 睨んでみても効果はない。いつか言い負かしてやる、と決めたところで、背後から声が飛んできた。

「朝から楽しそうだね、二人とも」

 振り返ると、侑芽が鞄を肩にかけたまま立っていた。

「侑芽! 聞いてよ、怜央くんがまた私をからかうの!」

「それは大変だね」

「でしょ?」

「でも澪、結構楽しそうだったよ」

「味方がいない!」

 二人が笑い始め、私も結局つられてしまう。こういう時間が変わらないことが、なんだか嬉しかった。