世界でいちばん、君に届かない

 もう三年になる。

 最初の頃は、何かを見つけるたびに振り返っていた。面白い看板を見たときも、綺麗な空を見上げたときも、話しかけたい相手がすぐ隣にいる気がして。そして、振り返った先に誰もいないことを、何度も確かめた。

 写真を撮ったあと、無意識に画面を見せようとして、手を止めたこともあった。少し上手に撮れた日ほど、その癖が抜けない自分に困ってしまった。

 けれど、見せたい人がいなくなったからといって、写真を撮る楽しさまで失ったわけではない。

 私の好きな景色を、私とは違う言葉で褒めてくれる友達がいる。小春ちゃんと写真を見せ合う時間も、今では放課後の楽しみのひとつになった。

 季節が巡れば制服の袖丈が変わるように、寂しさにも少しずつ慣れていく。友達と笑い、部活に夢中になり、帰ったら母とくだらない話をする。休日には父の仕事の愚痴を聞いて、家族で笑う。

 ちゃんと前に進んでいる。

 それは本当だ。

 ただ、私の心には、昔から決まっていた席がひとつある。

 誰にも譲らないと決めたわけではない。空けておこうと意識したこともない。誰かと笑っているときには、そこに空席があることさえ忘れている。

 それなのに、ふと気づくと、そこにはいつも誰も座っていなかった。