世界でいちばん、君に届かない

 四月になり、私たちはとうとう高校三年生になった。

 廊下の掲示板には進路説明会の日程や模試の案内が貼られ、去年までは先輩たちのものだった受験や卒業という言葉が、急に自分たちの現実として近づいてきた。

 それでも、休み時間に聞こえる笑い声も、窓の向こうで揺れる桜も、去年とあまり変わらない。こうして隣に侑芽がいて、くだらない話に付き合ってくれることも。

 来年の春には、きっとこの教室も、隣の席も、当たり前ではなくなる。そう考えると少し寂しいけれど、今から惜しんでばかりいるのももったいない。だったら今年は、去年以上にたくさん笑って過ごしたい。

 変わらないものがあるのは、ありがたい。

 私はそう思う。

「そういえば、今年も写真部?」

「もちろん。カメラを手放したら、私の取り柄が減っちゃう」

「取り柄を数で管理してるんだ」

「残りは愛嬌と、そこそこの早起き」

「早起き、先週失敗してたよね」

「……残り一個になりました」

 侑芽が声を上げて笑う。

 こういう時間が好きだった。特別なことが起きなくても、どうでもいい話で笑えて、昼休みにはお弁当のおかずを交換して、帰り際にまた明日と言える。

 私の毎日は、ちゃんと楽しい。

 きっと周囲から見れば、心配されるようなことなんて何もない。