世界でいちばん、君に届かない

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 部活動を終えて校門を出ると、春の風はまだ少し冷たかった。駅前の商店街は、夕食の買い物客で賑わっている。

「……澪」

 背後から声をかけられ、振り返った。

「伊織(いおり)! お疲れさま!」

「……何、その無駄に元気な挨拶」

「第一声から失礼だね!?」

 朝霧(あさぎり)伊織(いおり)。

 家が近い、一学年下の幼なじみだ。

 彼が歩き出したので、慌てて隣に並ぶ。

 昔は小さかったのに、今では私の背を追い越した。遠慮のなさは変わらないけれど。昔の伊織を知っているからこそ、こうして隣に並ぶたびに、少しだけ不思議な気分になる。

「今日もバスケ?」

「そう」

「頑張ってるねえ。偉い偉い」

「子供扱いしないで」

「えー、昔はあんなに可愛かったのに」

「澪の記憶、都合よく加工されてない?」

「されてません!」

 大人びた顔に、ほんの少し笑みが浮かんだ。

「ねえ、もう少し年上を敬う気持ちを持ってもいいと思う」

「尊敬できるところがあればね」

「あるでしょ! いっぱい!」

「例えば?」

「……えっと、優しさ?」

「自分で言うんだ」

「そこは認めてよ!」

 小学校の帰り道も、きっとこんな話をしていた。

「……今日、なんかあった?」

 不意に伊織が尋ねた。

「えっ。何で?」

「さっきから、いつもより落ち着きがない」

「いつもは落ち着いてるってこと?」

「そこまでは言ってない」

「ひどい!」

 伊織は隣から私を見ていた。妙に鋭い子なのだ。