世界でいちばん、君に届かない

 *

 好きだと言われた。

 たった二文字なのに、心臓はまだ速く動いていた。

 不器用だけれど誠実な久世くんの気持ちは、嬉しかった。

 けれど、嬉しいだけではなかった。

 理由は、わかっている。

 私には、まだ忘れられない人がいる。

 三年前に終わった恋。過去にしたつもりなのに、誰かのまっすぐな言葉に触れると、心の奥に残っているものがわかってしまう。

「……どうしよう」

 答えは出ない。それでも、あの言葉をなかったことにはしたくなかった。

 窓の外には、昨日と変わらない春の空がある。けれど明日、久世くんに「おはよう」と言うとき、きっと今日の顔を思い出す。

 少し恥ずかしくて、少し怖くて。そして、ほんの少し嬉しい。

 高校三年生の春。

 大人になるにはまだ遠い私の日常に、知らなかった誰かの想いが、静かに姿を現した。