*
放課後、怜央くんとの相談を終えた私は、写真部の部室へ向かおうとしていた。
文化祭はまだ先だけれど、展示場所や必要な備品は早めに決めておきたいらしい。最後に「澪の写真、俺も楽しみにしてるよ」と微笑まれ、少し嬉しくなってしまった。あの人は、そういうことを自然に言う。困ったものである。
廊下を曲がろうとしたとき、背後から低い声がした。
「……小宮山」
振り返ると、久世くんが立っていた。
「久世くん? どうしたの?」
彼は一度視線を落とした。いつも口数の少ない人だけれど、今日は妙に返事が遅い。
「……今、時間あるか」
「うん。ちょっとなら大丈夫だよ」
「話がある」
「私に?」
「ああ」
あまりに真剣な顔なので、困りごとでもあるのかと心配になった。
「うん、いいよ」
久世くんは頷き、人通りの少ない渡り廊下へ歩き出した。窓の外では若葉が風に揺れ、グラウンドから運動部の掛け声が聞こえる。なぜか今日は、自分の靴音まではっきり聞こえた。
立ち止まった久世くんは、しばらく黙っていた。
「……あのさ」
先に口を開いたのは私だった。
「何かあった?」
「……いや」
「もしかして、困ってることとか?」
「違う」
「そっか」
会話が終わってしまった。
私が三つ喋ると、彼がひとつ返す。いつもどおりなのに、今日は沈黙が気になった。
久世くんは一度、握った手をほどいた。
「……小宮山」
「うん?」
「お前、今……付き合ってる奴、いるか」
「えっ?」
思わず瞬きをした。
「い、いないけど……」
「そうか」
放課後、怜央くんとの相談を終えた私は、写真部の部室へ向かおうとしていた。
文化祭はまだ先だけれど、展示場所や必要な備品は早めに決めておきたいらしい。最後に「澪の写真、俺も楽しみにしてるよ」と微笑まれ、少し嬉しくなってしまった。あの人は、そういうことを自然に言う。困ったものである。
廊下を曲がろうとしたとき、背後から低い声がした。
「……小宮山」
振り返ると、久世くんが立っていた。
「久世くん? どうしたの?」
彼は一度視線を落とした。いつも口数の少ない人だけれど、今日は妙に返事が遅い。
「……今、時間あるか」
「うん。ちょっとなら大丈夫だよ」
「話がある」
「私に?」
「ああ」
あまりに真剣な顔なので、困りごとでもあるのかと心配になった。
「うん、いいよ」
久世くんは頷き、人通りの少ない渡り廊下へ歩き出した。窓の外では若葉が風に揺れ、グラウンドから運動部の掛け声が聞こえる。なぜか今日は、自分の靴音まではっきり聞こえた。
立ち止まった久世くんは、しばらく黙っていた。
「……あのさ」
先に口を開いたのは私だった。
「何かあった?」
「……いや」
「もしかして、困ってることとか?」
「違う」
「そっか」
会話が終わってしまった。
私が三つ喋ると、彼がひとつ返す。いつもどおりなのに、今日は沈黙が気になった。
久世くんは一度、握った手をほどいた。
「……小宮山」
「うん?」
「お前、今……付き合ってる奴、いるか」
「えっ?」
思わず瞬きをした。
「い、いないけど……」
「そうか」
