ちょっ。
女子高生に、外泊しろとのお達しなのだ。
しかも、いきなり今夜。
い、行くとこが、ありませんが。
やや青くなりながら、情けないことを、早紀は思った。
残念ながら、友達と呼べる人間は、一人もいなかったのだ。
独特のクセのある生徒ばかりの中で、早紀は何というか――空気のような存在だった。
小さいうちから、真理を相手にしてきたため、とにかく彼女は反射的に自己防衛に特化してしまったのだ。
余計なことは言わない、でしゃばらない、声をかけられないように存在を薄くする。
そんなことばかりが身についたせいで、おそらくいまだ早紀の名前さえ知らない生徒もいるだろう。
小学校から、ほとんど生徒に変化はないというのに、だ。
それで、早紀もよかった。
いいこともないが、悪いこともない穏やかな生活があれば、それで満足だったのだ。
そんな空気女子高生は、今夜屋敷に帰ってはいけないと言われてしまった。
どう、しよう。
反論したり、拒否したりという考えは、早紀にはない。
それも、空気になるべく努力した結果だ。
知り合いの家がないなら、ホテルとかになるのだろう。
しかし、高校生が平日の夜に、制服でホテルに泊まって不審がられないだろうか。
受験シーズンでもないというのに。
うーん、うーん。
悩んでいた早紀に、ふと光が差した。
そうだ、と。
浮かんだのは、修平の顔。
彼に相談すれば、どこか宿泊先を紹介してくれるかもしれない。
幸い、携帯電話がある。
昼休みにでも、電話で相談してみよう、うん。
なんとかなりそうな事実に、早紀はにこっとした。
瞬間、はっと顔を引き締める。
さすがに、いまの表情は真理に見られただろう。
幸い。
彼は、その後何も言わなかった。
何故帰ってきてはいけないのか──理由を聞かないことさえデフォルトだった自分を、早紀は後で悔やむこととなる。
女子高生に、外泊しろとのお達しなのだ。
しかも、いきなり今夜。
い、行くとこが、ありませんが。
やや青くなりながら、情けないことを、早紀は思った。
残念ながら、友達と呼べる人間は、一人もいなかったのだ。
独特のクセのある生徒ばかりの中で、早紀は何というか――空気のような存在だった。
小さいうちから、真理を相手にしてきたため、とにかく彼女は反射的に自己防衛に特化してしまったのだ。
余計なことは言わない、でしゃばらない、声をかけられないように存在を薄くする。
そんなことばかりが身についたせいで、おそらくいまだ早紀の名前さえ知らない生徒もいるだろう。
小学校から、ほとんど生徒に変化はないというのに、だ。
それで、早紀もよかった。
いいこともないが、悪いこともない穏やかな生活があれば、それで満足だったのだ。
そんな空気女子高生は、今夜屋敷に帰ってはいけないと言われてしまった。
どう、しよう。
反論したり、拒否したりという考えは、早紀にはない。
それも、空気になるべく努力した結果だ。
知り合いの家がないなら、ホテルとかになるのだろう。
しかし、高校生が平日の夜に、制服でホテルに泊まって不審がられないだろうか。
受験シーズンでもないというのに。
うーん、うーん。
悩んでいた早紀に、ふと光が差した。
そうだ、と。
浮かんだのは、修平の顔。
彼に相談すれば、どこか宿泊先を紹介してくれるかもしれない。
幸い、携帯電話がある。
昼休みにでも、電話で相談してみよう、うん。
なんとかなりそうな事実に、早紀はにこっとした。
瞬間、はっと顔を引き締める。
さすがに、いまの表情は真理に見られただろう。
幸い。
彼は、その後何も言わなかった。
何故帰ってきてはいけないのか──理由を聞かないことさえデフォルトだった自分を、早紀は後で悔やむこととなる。


