さすがに、高校卒業したら、出ていかなくちゃなあ。
シーンと静まり返る車内は、いつものこと。
登下校の、送迎の間の風物詩だ。
図太さを身につけた早紀は、隣の氷の王子がしゃべらない限り、ぼんやりと考え事が出来る。
そして、しゃべることなど、めったになかった。
今朝きた、あの一撃も久しぶりのことで。
彼も、長い間早紀を目障りに思い続けているようだ。
この屋敷での生活と、風変わりな学校で、随分早紀も世間知らずになっているだろう。
とは言え、ねっこは庶民なはずなので、仕事さえ見つければ、暮らしていけるんじゃないかと考えていた。
あと一年ちょいかあ。
意外と残り時間が短い事実に、早紀は驚いた。
たったそれだけの期間で、就職を探し、学校を卒業して、あの屋敷を出るのだ。
結構、忙しそう。
ちょっとビビって、早紀はへらっと笑ってしまった。
それを自覚して、はっと顔を引き締める。
真理に、見られたかと思ったのだ。
幸い、隣の彼は窓の外を見ていた。
セーフ。
自分の頬に手をあてて、早紀は顔を引き締める。
あと一年ちょっと。
真理に、実力で叩き出されないようにしないといけないのだ。
「おい…」
なのに。
そんな、早紀の考えを吹っ飛ばすような、本日二回目の王子の言葉。
ひっ。
なまじ、車内は近いせいもあって、声にこもった低い響きが、ダイレクトに伝わってくる。
こんな距離で、はっきりと出ていけと言われたら、断りづらいではないか。
完全にビビりまくりながら、早紀はそれでも王子の次の言葉を待たなければならなかった。
逃げ場は、ない。
「おまえ、今夜はうちに帰ってくるな」
突き付けられたのは── 一方的で強引な一言だった。
シーンと静まり返る車内は、いつものこと。
登下校の、送迎の間の風物詩だ。
図太さを身につけた早紀は、隣の氷の王子がしゃべらない限り、ぼんやりと考え事が出来る。
そして、しゃべることなど、めったになかった。
今朝きた、あの一撃も久しぶりのことで。
彼も、長い間早紀を目障りに思い続けているようだ。
この屋敷での生活と、風変わりな学校で、随分早紀も世間知らずになっているだろう。
とは言え、ねっこは庶民なはずなので、仕事さえ見つければ、暮らしていけるんじゃないかと考えていた。
あと一年ちょいかあ。
意外と残り時間が短い事実に、早紀は驚いた。
たったそれだけの期間で、就職を探し、学校を卒業して、あの屋敷を出るのだ。
結構、忙しそう。
ちょっとビビって、早紀はへらっと笑ってしまった。
それを自覚して、はっと顔を引き締める。
真理に、見られたかと思ったのだ。
幸い、隣の彼は窓の外を見ていた。
セーフ。
自分の頬に手をあてて、早紀は顔を引き締める。
あと一年ちょっと。
真理に、実力で叩き出されないようにしないといけないのだ。
「おい…」
なのに。
そんな、早紀の考えを吹っ飛ばすような、本日二回目の王子の言葉。
ひっ。
なまじ、車内は近いせいもあって、声にこもった低い響きが、ダイレクトに伝わってくる。
こんな距離で、はっきりと出ていけと言われたら、断りづらいではないか。
完全にビビりまくりながら、早紀はそれでも王子の次の言葉を待たなければならなかった。
逃げ場は、ない。
「おまえ、今夜はうちに帰ってくるな」
突き付けられたのは── 一方的で強引な一言だった。


