極東4th

 夕方、着替えて廊下に出る。

 いつもなら、そろそろ学校帰りの車が着く頃だ。

 廊下に出るや、修平に会った。

 会った、というのは何か変だ。

 廊下の壁に、寄りかかるようにして立っている彼を、見たという方が正しい。

 いつもの、修平の様子ではなかった。

 自分が死んだ事件以来、彼とは疎遠にしている。

 早紀の思っていたような、人ではなかったせいだ。

 いい人だと思っていたのが真逆だと、そのギャップの大きさとショックが比例する。

 元々冷たい真理の方が、よほど平気だった。

 だが、あまりにおかしい。

「あの…大丈夫ですか?」

 遠巻きに、早紀は声をかけてみた。

 非常に重そうな動きで、顔が上がる。

「あ…あぁ、気にしないでくれ」

 下がる眼鏡を戻しながら、彼は手で軽く早紀を払う仕草をした。

「でも…誰か呼びましょうか? 具合、悪そうですよ」

 修平の部屋は、そう遠くはない。

 そこまで帰れないほど、彼の具合は悪いのではないだろうか。

「ちょっと真理に、魔力を吸われただけだ…傍系のつらさだよ」

 よっと。

 修平は、何とか身体をまっすぐに戻し、しかし、よろけながら自室へ向かおうと歩き出した。

 真理に?

 立場的に言えば、修平よりも真理の方が上だ。

 その上の人間に、魔力をよこせと言われたら、拒めないのだろう。

 真理もまた、昨日の戦いで魔力を消耗したに違いない。

 ふぅん。

 人間で言うところの、献血したようなものなのだろう。

 修平の様子からすると、その内治るようだ。

 他の人から、魔力ってもらえるんだ。

 真理は、上の人間だから命令すれば、魔力はもらい放題ということか。

 早紀のような、このだるさは感じていないに違いない。

 いいなあ。

 素直に、ちょっと真理が羨ましかった。