極東4th

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 朝。

 早紀は、目を覚ました。

 いつものように起き上がり、ベッドの上に座って母親の写真を見る。

「おかあさん…おは……」

 そこで──彼女のネジが切れた。

 眠りの世界を黒とたとえるなら、いまの早紀は白い世界にいて。

 何かを考えたいとか、動きたいとか。

「したい」という欲求が、まったく失われてしまっていた。

 ただ、自分の肉体が存在するだけで、それ以外は全て白で塗りつぶされていたのだ。

 そんな中にあって。

 早紀は、足だけがほのかに温かいような冷たいような、そんな感触を味わっていた。

 不定期に触れる、まとわりつくような風ではない何か。

 ちゃぷん。

 一度だけ──音がした。

 それが何なのか、考えることは出来ない。

 早紀は、そのぬるい何かに足を浸したまま、白い世界で立ち尽くすだけなのだ。

 ふと。

 自分の、右手が見えた。

 だらりと下ろしたままの右手が見えた、ということは。

 早紀は、首を動かしていたのだ。

 右手が。

 とても。

 あたたかい。

 足のぬるさなど忘れてしまうほど、自分の右手が熱を持っている。

 その熱が、右手から少しずつ腕へ肩へと上がってくるのだ。

 とてもとても、冷えていたのが分かる。

 この温度を、ずっと自分が心待ちにしていたことも。

 白い世界をも、右手の熱は溶かし始める。

 自分を。

 助け出してくれる温度。

 早紀は、温かい右手を動かしてみた。

「おかあ…さん…」

 何かを──握り返していた。