極東4th

 いつもの存在感の薄さとは、まったく違う。

 生気そのものが、希薄になってしまっている。

 まるで。

 大量の、魔力を抜かれたかのように。

 まさか。

 真理は、抜け殻になった早紀の胸元を開いた。

 傷は──ほぼ、なかった。

 金の糸ほどの、痕跡が残っているだけ。

 この傷が、早紀の魔力を吸い取ったのかどうかは分からない。

 しかし、いまの彼女は、「一応」生きているとしか言えないほど、魔力が枯渇しかけていた。

「……っ」

 真理は、頭を抱えた。

 大きな、葛藤があるのだ。

 彼は、鎧の主で。

 この早紀の主で。

 そして、偉大なるカシュメル家直系の主でもある。

 その真理が、どうして下僕のために、力を尽くす必要があるのか、と。

 しかし、もしこの状態で、彼女が鎧になれなかったなら、真理は戦いに出られなくなる。

 ならば、他の誰かの魔力を。

 だが、自分より下に見ている相手に、魔力を分けてやるようなお人よしなど、カシュメル家の一族にはいない。

 勿論、主である真理が命令すれば従いはするが、自尊心を深く傷つけられるだろう。

 使用人たちは、かろうじて魔族と言える程度の低階級のものばかりで、早紀に分けるほどの魔力があるかも怪しいものだ。

 深い眉間の皺の間で、葛藤と戦っていた彼は。

 ついに、ベッドから離れた。

 扉に向かって足を踏み出す。

 開いたままの扉に手をかけ。

 真理はそれを──部屋の内側から閉ざした。

 ご丁寧に、魔力でカギをかける。

 そして再び、早紀の元へと戻ったのだ。

 これから。

 これから真理がすることは、誰にも知られてはならなかった。

 カシュメルの名において。

 主が下僕に──魔力を分けてやるなど!