極東4th

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 夜のうちに、真理は何箇所かに連絡をした。

 だが、必要な答えは返ってこなかった。

 早紀の傷について、だ。

 鎧を持つ者たちは、みな特権階級の選ばれし者たちで。

 真理のカシュメル家も含め、彼らは血族主義であるために、外部と鎧の情報を共有しようという気など、さらさらない。

 だから。

 その中でも、更に少ない憑き魔女の情報など、手に入れようもなかった。

 一瞬。

 頭に、トゥーイの顔がよぎる。

 彼なら身近で、同じ憑き魔女を抱えている。

 しかし。

 真理が、彼に教えを請うなど──ありえなかった。

 意外と、夜が明ければ、あっさり治っているようなものなのかもしれない。

 トゥーイの憑き魔女も、一年鎧の役を引き受けているが、未だに登校しているではないか。

 様子だけは、見てくるか。

 朝、真理は早紀の部屋に向かうことにしたのだ。

 彼女の部屋の前に立ち、澱むことなくノックをした。

 返事はない。

 まだ、寝ているのだろうか。

 あるいは、やはり怪我が治っていないのか。

 普段の生活ならば、起きていてもおかしくない時間なのだが。

 真理は、鎧の主として当然のごとく扉を開けた。

 そして見たのだ。

 早紀は──ベッドの上に座っているのを。

 起き上がれるのか。

 その事実に、まずひとつ安堵する。

 痛がっているような様子はない。

 しかし、同時に違和感にも気づく。

 ならばなぜ、ノックに返事をしない。

 そして、何故。 

 こっちを見ない。

 真理は、ツカツカとベッドへと近づいた。

「おい…」

 その肩に手をかけると。

 まるで、紙のように早紀はベッドへと仰向けに倒れたのだ。

 瞳は、ちゃんと開いている。

 しかし──ガラス玉のように、何も映してはいなかった。