極東4th

「ああ…ここにいたか」

 夢路の途中で、早紀はへたりこんでいたらしい。

 あんなに痛くても、寝つけるものなのかと、その事実も不思議だったが。

 その夢路の途中へ、迎えにきたのは──早紀と同化したという鎧の男だ。

 夢の中でさえ、傷口が痛いというのはどういう了見なのか。

 夢ならば、痛いという感覚などないはずなのに。

「それはな…お前の魂に傷をつけられたからだ」

 言葉にしていないものも、男は勝手に汲み上げて語り出す。

「魔族と天族なんて、真反対だからな…お互いの攻撃の効きだけは…ガチだぜ」

 よっと。

 ガチャッと鎧を鳴らして、男は早紀の前に片膝をついた。

 顔も上げられない早紀に、近づくための行動だろうか。

 そして、彼女の頭の側でこう言った。

「オレなら…治せるぜ?」

 なんと──甘美な言葉だったか。

 この悶える痛みから早紀を救えると、男は言うのだ。

 こんな状態の彼女さえ、はっと顔を上げてしまうほどの威力があった。

「おっと…ただし、それにはお前さんの魔力がいる…治すのに必要な量だ」

 それを、抜いていいのか?

 何故、そんなことを聞くのか。

 早紀が魔女で、魔力を持っているというのなら、好きなだけ使えばいいのだ。

 それでこの痛みがなくなるのなら、安いものではないか。

 早紀は、こくこくと強くうなずいた。

「オーケィ…すぐ治してやるぜ」

 甘い、甘い言葉。

 心と魂の弱った早紀にとっては、彼しかすがる人がいないという気分にさせられる。

 差し出される金属の指先が、彼女の肩に触れたかと思うと。

 ズシンッ。

 身体が、鉛のように重くなった。

 金属の手だから重くなったんだ、と言えば納得もするが、肩が──ではなく、全身が、なのだ。

「あ、あれ…」

 早紀は、変な声を出した。

 夢なのに。

 目が。

 回る。