「蝕が…終わるぞ、卿ら」
トゥーイと真理の間の空気を、ベルガーが一言で断つ。
非常によろしくない気分のまま、しかし真理は、空蝕の閉じゆく様へと視線を馳せた。
初めての蝕と、その蝕の終わりなのだ。
横向きにある瞼が、ゆっくりと閉じていくような様を、じっと見つめた。
その瞼が、もとの空に触れようとした時。
微かなきらめきを見せる。
ああ。
これが──涙か。
「染めるぞ」
イデルグが、下から何かを捧げ持つかのように、両手を差し出す。
鎧から溢れる魔気とはまた違う、明らかに故意に作り出す魔気を、その両手に乗せるのだ。
ベルガーは、恭しく宙で片膝をつくようにして、手から魔気を生み出す。
トゥーイも、両手に気を溢れさせ始めた。
初めての戦い。
初めての勝利。
そして、初めての──儀式。
両手を、ゆっくりと前に出す。
全身を血液のように流れる魔力を、両手に集めるのだ。
魔力を皮膚のすぐ内側に集めると、立ちのぼるように魔気が溢れてくる。
こうして、涙を魔族の色に染めるのだ。
黒く、より黒く。
そうすることで、この蝕の持つエネルギーは、魔族のものとして極東エリアに降り注ぐ。
『地』を支配するに相応しい種族を決めるための、エゴイスティックなマーキングだ。
魔のエネルギーを帯びた涙を浴びると、無傷では済まない他の種族は、その間、隠遁を余儀なくされる。
魔族たちの学校や屋敷などは、敵の涙の影響を受けないよう『傘』をかけてある。
その『傘』の範囲以外、自由に動き回れないのだ。
出られるのは、鎧持ちくらいか。
「どうした、ベルガー卿…」
完全に黒に染まった涙が、蝕の終わりからこぼれ落ちる瞬間。
イデルグが、隣の男を気にした。
羽の鎧を持つ男が、一瞬辺りを気にする動きをしたからだ。
「潮の…否…気のせいであろう」
ベルガーは、すくっと立ち上がるや兜を左右に振って見せた。
こうして。
真理の初陣は──終わった。
トゥーイと真理の間の空気を、ベルガーが一言で断つ。
非常によろしくない気分のまま、しかし真理は、空蝕の閉じゆく様へと視線を馳せた。
初めての蝕と、その蝕の終わりなのだ。
横向きにある瞼が、ゆっくりと閉じていくような様を、じっと見つめた。
その瞼が、もとの空に触れようとした時。
微かなきらめきを見せる。
ああ。
これが──涙か。
「染めるぞ」
イデルグが、下から何かを捧げ持つかのように、両手を差し出す。
鎧から溢れる魔気とはまた違う、明らかに故意に作り出す魔気を、その両手に乗せるのだ。
ベルガーは、恭しく宙で片膝をつくようにして、手から魔気を生み出す。
トゥーイも、両手に気を溢れさせ始めた。
初めての戦い。
初めての勝利。
そして、初めての──儀式。
両手を、ゆっくりと前に出す。
全身を血液のように流れる魔力を、両手に集めるのだ。
魔力を皮膚のすぐ内側に集めると、立ちのぼるように魔気が溢れてくる。
こうして、涙を魔族の色に染めるのだ。
黒く、より黒く。
そうすることで、この蝕の持つエネルギーは、魔族のものとして極東エリアに降り注ぐ。
『地』を支配するに相応しい種族を決めるための、エゴイスティックなマーキングだ。
魔のエネルギーを帯びた涙を浴びると、無傷では済まない他の種族は、その間、隠遁を余儀なくされる。
魔族たちの学校や屋敷などは、敵の涙の影響を受けないよう『傘』をかけてある。
その『傘』の範囲以外、自由に動き回れないのだ。
出られるのは、鎧持ちくらいか。
「どうした、ベルガー卿…」
完全に黒に染まった涙が、蝕の終わりからこぼれ落ちる瞬間。
イデルグが、隣の男を気にした。
羽の鎧を持つ男が、一瞬辺りを気にする動きをしたからだ。
「潮の…否…気のせいであろう」
ベルガーは、すくっと立ち上がるや兜を左右に振って見せた。
こうして。
真理の初陣は──終わった。


