極東4th

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 ドアが、勢い良く開かれた瞬間。

 真理は、飛び起きていた。

 明かりは消えたままだが――分かる。

 早紀、だ。

 予感はなかった。

 本当に、何も感じないのだな、とその事実を噛み締める瞬間でもある。

「空蝕だな?」

 駆け込んでくる早紀の言葉より早く、真理は問うた。

 闇の中で、もつれるような動きの彼女は、首がもげんばかりに頷く。

 蝕に気付けるのは――鎧だけ。

 いや、そうではない。

 逆に、鎧は蝕を知るために、特別に作られたものだ。

 ああ。

 真理は、あの早紀にさえ飛び込んでこさせる空蝕というものに、武者震いした。

 震えながら、早紀の額に指を伸ばしていた。

「いくぞ…」

 ガシャンっ!

 早紀の身体が、人型という枠を超える。

 その変貌すら、いまの真理には長く感じた。

 早く、と。

 早く、俺を飲み込め。

 そして、一秒でも速く、蝕にたどり着かせろ。

 一瞬よぎった、トゥーイの姿。

 あの3rdより、真理は優秀でなければならない。

 でなければ、カシュメル家は4thのままだ。

 父親が早く死んで、極東エリアに空席が出来ている間、彼は沢山の恥辱を受けた。

 彼だけでなく、極東エリアの全席が、それに耐えなければならかったのだ。

 大敗、そして長い空席。

 その汚名をすすぐ機会が、ようやくにしてやってきたのである。

 真理は待ちきれずに、鎧が出来上がろうとする、闇の煙に手を伸ばす。

 鎧は、そんな真理を――受け入れた。