極東4th

 そのまま。

 目がさめると、思っていた。

 鎧の男に笑われて、あれ、と夢から放り出されると。

 なのに、今日の夢は終わらなかった。

 あれ?

 早紀は、その違和感に引っ張られるように、辺りを見回した。

 頭上の映像は消え、再び静かな状態に戻っている。

 いま、自分に生まれた違和感を、早紀が消化出来ないでいると。

 ガチャ。

 金属が、鳴った。

 ガチャガチャガチャガチャ!

 地震でも起きたかのように、小刻みに鎧が震えだしている。

「きた…来た来た来た…」

 声が。

 彼の声が、ひどくなる鎧に共鳴するかのように、喜びに打ち震えた。

「戻れ! そして新当主を叩き起こせ!」

 継ぎ目という継ぎ目が、大きな音を立て続ける中。

 制御しきれないほどの、その小手の先の指が、早紀に向けられる。

 な、に?

 ぶれる黒い指先は、彼女の額に向かっていた。

「来た…蝕だ!! 待ち焦がれたぞ!!」

 震えながらも、それでも指は早紀の額で円を描いた。

「あっ!」

 その悲鳴は、既に現実の音を伴っていた。

 更に。

 彼女は既に、真理の部屋の前に立っていたのだ。

 しょ、く。

 一瞬前の鎧の言葉が、頭をよぎる。

 同時に、身体の奥底から、熱い何かがせり上がってきていた。

 彼女の中で、あの鎧が猛っているような。

 あらがい難い、そして、生まれて初めて持つ衝動。

 手が。

 自分の手が。

 自分のものではないように、ドアノブを掴んでいた。

 あの真理の部屋を――ノックなしで開けるなんて。