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「くーしょく?」
聞いたことのない言葉を、早紀は唇で繰り返してみた。
さすがに慣れてきた、夢の中での出来事だ。
「そう、空蝕。空が欠ける夜のことだ」
鎧の男は、そこに空があるかのように、上を指差した。
すると、本当に闇夜が広がり始めるではないか。
月や星のある、夜の空が。
さすが夢。
便利だなあ。
早紀は、あんぐりと空を見上げた。
「蝕が起きると、空に更に暗い影が出来る…似たようなのを、お前も見たろ?」
言われて、早紀はすぐに思い当たった。
真理と空を飛んで、黒い球体に入ったことを、だ。
「あれは疑似蝕で、本物じゃないがな。ああいうのが、不定期に発生するわけだ」
いま、頭の上にある空の一部が、闇に欠けてゆくのが分かる。
「その空蝕の、『涙』を奪い合うんだ」
空で――火花が散った。
遠いカメラの映像のように、何かが激しくぶつかり合う。
「あの中に、オレたちも行くんだ」
見上げたままの早紀の耳に、楽しげな声が届く。
血の奥が沸き立つような、熱狂さえ含まれているような声。
早紀は、空から視線を降ろしながら、彼を見た。
そうだ。
早紀は鎧なのだ。
真理も、初陣という単語を使ったではないか。
だから、早紀も戦わなければならないということになる。
ひえぇ。
理解したら、腰が引けた。
争いなんか、好きなはずがない。
「む、む、無理…死んじゃうよ」
魔族の戦いなんて、想像もつかないようなものを、早紀が出来るはずがない。
そんな彼女に、鎧の男は楽しさを消したりしない。
「ばーか、お前にはもう選択肢はないんだよ」
それどころか――とどめを刺してくれたのだった。
「くーしょく?」
聞いたことのない言葉を、早紀は唇で繰り返してみた。
さすがに慣れてきた、夢の中での出来事だ。
「そう、空蝕。空が欠ける夜のことだ」
鎧の男は、そこに空があるかのように、上を指差した。
すると、本当に闇夜が広がり始めるではないか。
月や星のある、夜の空が。
さすが夢。
便利だなあ。
早紀は、あんぐりと空を見上げた。
「蝕が起きると、空に更に暗い影が出来る…似たようなのを、お前も見たろ?」
言われて、早紀はすぐに思い当たった。
真理と空を飛んで、黒い球体に入ったことを、だ。
「あれは疑似蝕で、本物じゃないがな。ああいうのが、不定期に発生するわけだ」
いま、頭の上にある空の一部が、闇に欠けてゆくのが分かる。
「その空蝕の、『涙』を奪い合うんだ」
空で――火花が散った。
遠いカメラの映像のように、何かが激しくぶつかり合う。
「あの中に、オレたちも行くんだ」
見上げたままの早紀の耳に、楽しげな声が届く。
血の奥が沸き立つような、熱狂さえ含まれているような声。
早紀は、空から視線を降ろしながら、彼を見た。
そうだ。
早紀は鎧なのだ。
真理も、初陣という単語を使ったではないか。
だから、早紀も戦わなければならないということになる。
ひえぇ。
理解したら、腰が引けた。
争いなんか、好きなはずがない。
「む、む、無理…死んじゃうよ」
魔族の戦いなんて、想像もつかないようなものを、早紀が出来るはずがない。
そんな彼女に、鎧の男は楽しさを消したりしない。
「ばーか、お前にはもう選択肢はないんだよ」
それどころか――とどめを刺してくれたのだった。


