極東4th

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「くーしょく?」 

 聞いたことのない言葉を、早紀は唇で繰り返してみた。

 さすがに慣れてきた、夢の中での出来事だ。

「そう、空蝕。空が欠ける夜のことだ」

 鎧の男は、そこに空があるかのように、上を指差した。

 すると、本当に闇夜が広がり始めるではないか。

 月や星のある、夜の空が。

 さすが夢。

 便利だなあ。

 早紀は、あんぐりと空を見上げた。

「蝕が起きると、空に更に暗い影が出来る…似たようなのを、お前も見たろ?」

 言われて、早紀はすぐに思い当たった。

 真理と空を飛んで、黒い球体に入ったことを、だ。

「あれは疑似蝕で、本物じゃないがな。ああいうのが、不定期に発生するわけだ」

 いま、頭の上にある空の一部が、闇に欠けてゆくのが分かる。

「その空蝕の、『涙』を奪い合うんだ」

 空で――火花が散った。

 遠いカメラの映像のように、何かが激しくぶつかり合う。

「あの中に、オレたちも行くんだ」

 見上げたままの早紀の耳に、楽しげな声が届く。

 血の奥が沸き立つような、熱狂さえ含まれているような声。

 早紀は、空から視線を降ろしながら、彼を見た。

 そうだ。

 早紀は鎧なのだ。

 真理も、初陣という単語を使ったではないか。

 だから、早紀も戦わなければならないということになる。

 ひえぇ。

 理解したら、腰が引けた。

 争いなんか、好きなはずがない。

「む、む、無理…死んじゃうよ」

 魔族の戦いなんて、想像もつかないようなものを、早紀が出来るはずがない。

 そんな彼女に、鎧の男は楽しさを消したりしない。

「ばーか、お前にはもう選択肢はないんだよ」

 それどころか――とどめを刺してくれたのだった。