極東4th

 明け方。

 夢路から、早紀だけが一足早く抜け出る。

 貴沙の目覚めは、彼女よりずっとずっと遅いのだ。

 うっすらと、目を開けると。

 同じように、わずかにまぶたの上がった瞳が、自分を映していた。

 黒々としていた髪の艶と深さは、日を追うごとに強くなる気がする。

 その瞳の中の黒も、まったく同じだ。

 覗きこむだけで、違うところまで連れて行かれそうになる。

 そんな男が、早紀の身体を抱えてくれていた。

「極東に、新しく鎧の一族が編入された」

 だが、発せられる言葉に甘い音はない。

 ある意味、仕事の話だ。

 それを、目覚めの少しぼんやりした頭で、早紀は聞いていた。

 甘くはないが、聞きなれた心地よい声。

 明日の夜、その編入式があるというのだ。

 少し温度の低い手が、彼女の素肌の腕を軽くなでる。

「その人が…今度の極東の4thになるの?」

 けだるいまま、彼に語りかける。

 そうだと、微かに空気の揺らぐ気配。

 ああ。

 長い間空席だった極東の4thが、明日埋まるというのだ。

 それは、早紀にとって非常に感慨深いものだった。

 最初に二人が立った位置が、そこだったのである。

 あの時は、ひどい有様だった。

 自分が、魔女であると知ったばかりで。

 なのに、勝手に契約を交わした相手は、自分にひどい仕打ちばかりしたのだ。

 それから、幾年。

 その位置に、新しい人が来る。


 そして。

 真理は。

 こう言うのだ。


『貴公を、極東の4thとして任命する』──と。


   ※


 むかしむかし、あるところに。

 これはそんなおとぎ話の、ありきたりな言葉で始まる物語。


  終