そして、最後のグループ。
とはいうものの、『彼』は一人だった。
そう、彼だ。
イデルグの息子。
立っているのは、たった一人。
決着がついたと、そう聞いている。
ただ、早紀が戸惑ったのは──どっちなのか、分からなかったことだ。
どちらも大人びてはいたが、まだ若々しい男だった。
しかし、そこに立っているのは、違う面差しの男だったのだ。
頬からこめかみに残る深い傷と、短く刈り込まれた髪。
そして、この世の苦渋で出来た池に、深く沈められてきたかのような、苦味にひたされた表情。
イデルグの息子のどちらか、ということまで、分かったことさえ奇跡に思えた。
『ふーん、あれがどっちか、ね』
早紀の記憶をたどった貴沙が、興味深げに身体を動かす。
息子の方へと、近づこうと言うのだ。
だが、その行動に、早紀はあらがえない。
彼が、どちらなのか。
気にならないはずなど、ないのだから。
彼もまた、二つだったものだ。
早紀とは違う意味だが、自分の生存を賭けて、もう一人と向かいあったのだ。
彼女たちが融合出来たことは、鎧の気まぐれによる奇跡。
「はぁい」
貴沙は、イデルグの息子の前で、戸惑うことなく唇を開く。
一瞬の間があった。
男は、三度まばたきをしなければならず、そして貴沙がもう一度声をかけなければ、彼女を認識できなかったのだ。
「あんたは…どっち?」
貴沙は、貴沙の顔でそう問いかけた。
男は、その顔をじっとじっと見る。
何かを、思い出そうとするかのように。
そして。
肩をそびやかすのだ。
「それは…おれにも分からないことだな」
まるで──どっちでもいいことのように、彼は言い放った。
とはいうものの、『彼』は一人だった。
そう、彼だ。
イデルグの息子。
立っているのは、たった一人。
決着がついたと、そう聞いている。
ただ、早紀が戸惑ったのは──どっちなのか、分からなかったことだ。
どちらも大人びてはいたが、まだ若々しい男だった。
しかし、そこに立っているのは、違う面差しの男だったのだ。
頬からこめかみに残る深い傷と、短く刈り込まれた髪。
そして、この世の苦渋で出来た池に、深く沈められてきたかのような、苦味にひたされた表情。
イデルグの息子のどちらか、ということまで、分かったことさえ奇跡に思えた。
『ふーん、あれがどっちか、ね』
早紀の記憶をたどった貴沙が、興味深げに身体を動かす。
息子の方へと、近づこうと言うのだ。
だが、その行動に、早紀はあらがえない。
彼が、どちらなのか。
気にならないはずなど、ないのだから。
彼もまた、二つだったものだ。
早紀とは違う意味だが、自分の生存を賭けて、もう一人と向かいあったのだ。
彼女たちが融合出来たことは、鎧の気まぐれによる奇跡。
「はぁい」
貴沙は、イデルグの息子の前で、戸惑うことなく唇を開く。
一瞬の間があった。
男は、三度まばたきをしなければならず、そして貴沙がもう一度声をかけなければ、彼女を認識できなかったのだ。
「あんたは…どっち?」
貴沙は、貴沙の顔でそう問いかけた。
男は、その顔をじっとじっと見る。
何かを、思い出そうとするかのように。
そして。
肩をそびやかすのだ。
「それは…おれにも分からないことだな」
まるで──どっちでもいいことのように、彼は言い放った。


