極東4th

 そして、最後のグループ。

 とはいうものの、『彼』は一人だった。

 そう、彼だ。

 イデルグの息子。

 立っているのは、たった一人。

 決着がついたと、そう聞いている。

 ただ、早紀が戸惑ったのは──どっちなのか、分からなかったことだ。

 どちらも大人びてはいたが、まだ若々しい男だった。

 しかし、そこに立っているのは、違う面差しの男だったのだ。

 頬からこめかみに残る深い傷と、短く刈り込まれた髪。

 そして、この世の苦渋で出来た池に、深く沈められてきたかのような、苦味にひたされた表情。

 イデルグの息子のどちらか、ということまで、分かったことさえ奇跡に思えた。

『ふーん、あれがどっちか、ね』

 早紀の記憶をたどった貴沙が、興味深げに身体を動かす。

 息子の方へと、近づこうと言うのだ。

 だが、その行動に、早紀はあらがえない。

 彼が、どちらなのか。

 気にならないはずなど、ないのだから。

 彼もまた、二つだったものだ。

 早紀とは違う意味だが、自分の生存を賭けて、もう一人と向かいあったのだ。

 彼女たちが融合出来たことは、鎧の気まぐれによる奇跡。

「はぁい」

 貴沙は、イデルグの息子の前で、戸惑うことなく唇を開く。

 一瞬の間があった。

 男は、三度まばたきをしなければならず、そして貴沙がもう一度声をかけなければ、彼女を認識できなかったのだ。

「あんたは…どっち?」

 貴沙は、貴沙の顔でそう問いかけた。

 男は、その顔をじっとじっと見る。

 何かを、思い出そうとするかのように。

 そして。

 肩をそびやかすのだ。

「それは…おれにも分からないことだな」

 まるで──どっちでもいいことのように、彼は言い放った。