極東4th

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 その感覚を、早紀はどう表現すればよかったのだろう。

 またも、彼女は真理より背の高くなった視点で、彼を見ていた。

 自分に向かって歩き出すその身体が。

 自分に触れたかと思うと。

 自分の中の数多くの襞を、かきわけるような感覚。

 ぬるりとした、生々しい触感。

 脳に直接手を突っ込まれたら、こんな感覚なのだろうか。

 その、言葉に出来ない違和感に、早紀が固まっていると。

『静かだな…』

 襞を、直接振動させるような響き。

 しかし、声というには少し違う。

『何だ…気持ち悪いのか?』

 笑わない音の響きが、真理のものだと分かった。

 早紀が考えていることが、どうやら伝わってしまったようだ。

 変な気分、どころの話ではなかった。

 自分の身体の中に、真理がいる、ようなのだ。

 鎧になるとは聞いた。

 しかし、それが本当に自分の内側に彼を内包する、という意味とまでは理解していなかったのである。

 いま。

 いま、早紀はどういう姿をしているのか。

『いくぞ』

 身体が。

 自分が命令を出していないはずの身体が、勝手に動き出した。

 夜の窓に向かって。

 え? え?

『抵抗するな』

 何かを振り払うように、真理の言葉とともに自分の右腕が大きく振られる。

 ぶわっと。

 窓際のカーテンが、強い風に煽られる。

「うわっ」

 窓際にいた修平が、カーテンにまきつかれて驚きの声を上げた。

 そんな音も気にせず。

 早紀の身体は── 部屋の窓から飛び出したのだ。

 ここは、二階。

 えっと。

 早紀は、一瞬固まった。

 おーちーるー!!!!