極東4th

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 空の大きな蝕が、空全体を揺るがすように震えた。

 真理の飛んだ海上は、ただそれだけで全て氷に覆われてゆく。

 溶かせない。

 天族の鎧は、それを溶かせなくなっていた。

 少し前の、あの水蒸気の戦いが嘘のように。

 真理が、笑う。

 とても魔族的に、残忍に。

 早紀は、それを怖いとは思えなくなっていた。

 同じように笑うことは出来ないが、彼が種の生存本能のために闘っているのだと、ようやく魂で理解できたのだ。

『暴いたわよ…』

 低い笑いを浮かべるのは、貴沙も同じだった。

『あんたの言う限定解除とやらの中でも、一番下っ端だわ…コンプレックスの塊よ、こいつ』

 貴沙の解放する情報が、言葉より先に全身を駆け抜けた。

 限定解除した者が複数いるというのならば、そこでも順位がつけられるものだ。

 王のような地位につく者があれば、蔑まれる者もいて当然だった。

 この金の男の屈辱が、全身を広がる。

 初めて、きちんとした暴きを全身で感じた。

『ああ、かわいそうな天族ちゃん…せっかく限定解除したのに、結局普通の天族にしか威張れないなんてね』

 貴沙の嘲笑は、まるで鎧から漏れたかのように空気を震わせる。

 早紀は、その笑いよりも気になることがあった。

 貴沙が出来たというのならば。

 そして、相手が下っ端というのならば。

 さっき真理は、噴き上げる風を集めていた。

 うまくできるか、分からないけど。

 早紀は、その風を集めてみようとした。

 正確には、自分に取り込もうとしたのだ。

 脳髄まで、一気に突き抜ける新鮮な魔気だった。

 寝ていたわけではないというのに、目が覚めきるという強い感覚。

 自分が魔族なのだと。

 早紀はいま、それを喜びとして感じた。

 どんなおいしい食事よりも、この魔気に叶うものなどない。

 鎧の指の先端まで、魔族としての命を感じるのだ。

 それ以上、何かしたわけではない。

 なのに。

 真理が、こう言ってくれた。

『よくやった』

 金の星が──落ちた。