極東4th

---
 何と身軽に、何と力強く、真理は戦うのか。

 振り下ろした手で、海面を広く凍らせるのを、彼はいともたやすくやってのけたのだ。

 そして、自分の周囲に氷の粒のドームを作るのだ。

 真理が動く度、それらは彼を親のように慕いついてくる。

 そして、真理に害なす者には容赦なかった。

 振り出した刀ごと、一瞬で肘まで凍りついた青が、すぐさま後方へと退避する。

 彼が、それに遠慮などするはずがない。

 追いすがるだけで。

 真理が近付くだけで、相手は冷気に耐え切れず、全身の多くを氷に包まれて墜落してゆくのだ。

 水を根源とする海族にとって今の真理は、早紀のステルスなどなくても、一番相性の悪い相手だったと言っていいだろう。

 燃え盛る塊がすっ飛んで来たのは、次の瞬間だった。

 激しい金の尾を引いて近づくそれに、彼は正面から応えた。

 猛烈な速さで水蒸気と化す氷と、その水蒸気が新たな氷となるサイクルを目まぐるしく繰り返しながら、刃を叩きつけ合う。

 明らかに、いままで見た天族とは違う相手だ。

 見た目だけではない。

 強さも段違いだ。

 今の真理と、ほぼ互角で戦えているのだから。

 見れば、疑似蝕と言われるものの口がぱっくりと開いていて、そこから金の流星群が流れ始めていた。

 真理が意識の一部を、早紀に開放してくれているようで、それが他のエリアからの天族の増援であることを知る。

 その直後。

 反対の方角でも、疑似蝕が開いた。

 闇の流星群もまた、そこから始まるのだ。

「今宵の原因は…おのれか!」

 刀を打ち合い、熱と氷の攻防を続ける空間で、天の男は雄たけびのように声をあげた。

「いま滅びよ! ここで滅びよ! 塵と果てよ!」

 強い衝撃を、鎧全身で跳ね返す。

 貴沙も、内側から支えてくれているのが伝わってくる。

 心強い、もう一人の自分。

『暴きにくいわ…天族なのに、こいつ』

 悔しそうに、貴沙が唸った。

『ある意味で、俺とお仲間なのだろうな、こいつは』

 ふっと。

 真理が笑った気がした。