極東4th

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 大きな、とても大きな蝕。

 これまで数度しか、真理は蝕を見たことはないが、あきらかにそれらとは違うのだ。

 全ての思考が統一されたように、彼はこう理解した。

『大空蝕』

 鎧が、しびれるように吠える。

 それに呼応するように、空間のあちこちで振動が起きた。

 金の流星が飛んでくる。

 当然、漆黒の星も流れた。

 真理もその、漆黒の流星のひとつで。

 鎧たちが、自分の生みの親に向かって産声を上げるように、どの種族もその衝動を抑えられていない。

 そしてここは──海の真上だった。

 青の流星は、下から上に流れる。

 獲るのだ。

 あの空蝕を、天も青も打ち払い、魔族のものとするのだ。

 いま、彼の中にある欲望は、ただそれだけ。

 弾丸のように、大空蝕に近づく。

 空のあちこちで、疑似蝕も始まっていた。

 各陣営が、遠方から増援を送ろうとしているのか。

 真理は、自分の首筋に手をやる。

 そこに、あるのだ。

 愛刀が。

 水馬刀に似ていると、蔑んだこともあったそれが、たまらなく愛しく思えた。

 魔気を、集めるまでもなかった。

 真理はただ、一瞬願うだけでよかったのだ。

 それだけで刀を中心に、全身を氷が走る。

 周囲の空気さえも、凍りついた。

 自分を視認した青が、まっすぐに突っ込んでくる。

 早紀のステルスが、青には効かないという証拠だったが、そんなことはどうでもいいのだ。

 鎧を砕いたのは──これが初めてだった。