極東4th

---
 金属の全身が、打ち震えた。

 早紀は、3種の負の乗数を手に入れ──そして、真理を受け入れたのだ。

 いままでにない、強い充足感。

 足りないものなど、微塵もない。

 彼女は、いま初めて自分が完成したことに気づいたのだ。

 自分の深い底から、風のようなものが唸るように吹き上げる。

 その力ごと、真理にコントロールを委ねた。

 鎧の重い身体が、飛翔とは違う意味で浮き上がった。

 周囲の黒い帯が、一瞬にしてちぎれ飛び、全てが上に向かって吹き上がる。

 もはや、何の呪縛もなかった。

 風を生んでいるというのとは、違う気がする。

 鎧のエネルギーそのものが、吹き出して止まらない。

 まさに、そんなカンジだ。

『ゾクソクするわね』

 昂揚を隠しきれない貴沙が、その感覚にうっとりとした声をあげる。

 いまの早紀も、同じ状態だった。

 こんな快楽を、覚えたことなどない。

『早紀…』

 呼ばれるだけで、魂が震える。

 自分が金属の塊で、いまは本当によかったと思えるほどだ。

 でなければ、名前だけで膝を折ってしまっただろう。

 次の瞬間。

 鎧は、天を貫く弾丸となった。

 降りてくる時、あれほど彼らを苦しめた闇の雲など、一瞬も感じない力強さで、全てを切り裂いてゆく。

 すさまじい力が、溢れても溢れても止まらない。

 時間と次元と空間と。

 全てが、平等に切り裂かれていく。

 ああ。

 色の違う闇が、遠くに見えた。

 すぐに、分かった。

 空蝕の始まった空、だった。