極東4th

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 鎧の中で──鎧になる。

 そんなこと、彼は考えつきもしなかったし、可能だとは思えなかった。

 しかし、早紀は一人ではなく。

 貴沙をも一緒に、自分の鎧に巻き込もうとした。

 魂二人分の力で、彼女は強引に自分に鎧を引きずり寄せたのだ。

 何という。

 感心と呆れが、同時に彼の中に生まれていた。

 型破りにもほどがある。

 そして同時に。

 これまで覚えたこともない強い愛しさが、激しく渦を巻くのを感じた。

 もしいま早紀がそこに立っていたならば、抱き締めずにはいられなかっただろう。

 確かに、彼女はいる。

 だがそれは、固く黒い金属の姿だ。

 ただ、彼には抱擁よりももっと近い距離で、早紀を感じる手段があった。

 この鎧の中に、入ればいいのだ。

 反射しない黒のはずの表面が、ギラギラと輝いているのはいつもとは違う融合のせいか。

 その身に向けて、彼は歩き出した。

 手を伸ばしかけて、やめる。

 無粋な気がしたのだ。

 こんな手より。

 真理は、躊躇なくその身体を鎧の目の前に寄せた。

 早紀を見る。

 鎧の向こうに、確かに息づく彼女を見る。

 きっといま、彼女もまた自分を見ていることだろう。

 一歩、踏み出す。

 兜と顔がぶつかるまで、ほんの一瞬しかない。

 まるで。

 まるで、兜に口づけるように──真理は、彼女の中へと入っていった。