極東4th

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 真理の指先を、早紀は待っていた。

 目が、合う。

 真理の冷えた瞳が、自分を見ている。

 彼女の言葉に、彼が動いてくれる。

 鎧の男も動いたが、彼の指先が早紀の額に届く方が速かった。

 額で、くるりと円を描かれる。

 つないだままの手を、強く引っ張った。

 その向こうには、貴沙がいるのだ。

 彼女も、一緒に連れて行く。

「「………!!!」」

 声にならない叫びが、空間を大きく揺らす。

 早紀の全身からは真っ黒い魔気が吹き出し、自分と貴沙を包んでいく。

 その魔気に。

 その魔気に──男は引きずられていた。

 全身の棘が、自制できないように激しく飛び出したり引っ込んだりを繰り返す。

 必死で抵抗しているのが、分かった。

「「一緒に…出ればいいのよ」」

 早紀の声が、鎧の男と同じようなハウリングを生む。

 抵抗する彼が、自分と同期し始めているせいか。

「「はっ…小娘…とぼけた小娘!」」

 完全に棘を失いつつある男は、苦しげな声をあげた。

「「少しは、頭が回るようになったじゃないか!」」

 その腕が、激しく霧散した。

 早紀の腕が、金属に変わる。

「「あなたが教えてくれたんじゃない」」

 男の足が霧散する。

 早紀の足が、金属へと変異した。

「「面白かったからな…お前は、いままでで一番面白い魔女だったからな」」

 胴体が霧となる。

「「ありがとう…私に関心を持ってくれて」」

 続けて兜も吹っ飛ぶ。

 そして、全てが早紀の身を包んだ。

『ほんと…面白いわ』

 まったく面白くない口調で、身体の中の貴沙が毒づく。

 笑いたいのに笑えないのは、早紀が金属になってしまったから。

 後は。

 真理が歩いてくるのを、見ていればいい。