極東4th

 不思議な、空間だった。

 何が不思議だったか。

 早紀は、目の前に立つ存在──要するに、毎晩会っていた鎧の男を不思議だとは、正直思っていなかった。

 それは、彼女が手を伸ばす前から、大体分かっていたことだから。

 本当に不思議だったのは、倒れている者たちだ。

 真理が、近くに倒れている。

 それはいい。

 だが、もう一人。

 そう。

 貴沙も、そこに倒れているのだ。

 何とか半身を起しながら、早紀は波うつウェーブの髪をじっと見てしまった。

「「「お前さんは、魂が二つになったからな」」」

 相変わらず音量調整のされていない音で、おもしろげに男は言う。

 ここが、魂の世界だと、そう言いたいのだろうか。

 だが、まだ二人は意識を失ったままのようで。

「何で…呼んだの?」

 毎夜、早紀と彼は会える。

 ただ会いたければ、そこで会えばいいではないか。

 こんな手の込んだことをして、そして真理まで巻き込んで──彼は何を目論んでいるのか。

「「ここから…出るためだ」」

 少しだけ、ハウリングが減る。

「「どうやって鎧が作られるか…お前は見たはずだ」」

 そして、彼は声をひそめるように言った。

 ずきっと脳が痛む。

 ここに来るまで見せられた、膨大な量の巻き戻し映像。

 その最後に。

 その最後に、それらしいものがあった。

 魔族の男の喉に──流し込まれる蝕の涙。

 身体は光り出し、マグマのように物凄い熱を放ちながら、一瞬大きく膨れ上がって。

 そして。

 硬質化した。

 周囲を取り囲む、奇妙なくまどりをしたローブの男たち。

 あれは、タミの祖先である鎧鍛冶の一族なのか。

「「さぁ、捕らわれの憐れな蝕のしずくを…解放してやれよ」」

 両手を広げ上から目線で言い放つ態度は──やはり、いつもの彼にしか見えないというのに。