極東4th

---
 ズクズクと疼く額を抱えたまま、早紀は闇の帯の中を覗き込んだ。

 もしこの光が、あの鎧の男だというのならば──彼は、わざとここへ彼らを呼んだのだろう。

 早紀を深みへと突き落とし、そして真理がここにいることでさえ、おそらくあの鎧の男が関係しているに違いないのだから。

 突然。

 ドクンっと、闇の帯が大きく鼓動を打った。

 この帯の塊全体が、心臓であるかのように。

 早紀の額も、同じように大きく脈打つ。

 びくっとしてしまったが、その身体はしっかりと真理に抱きとめられているおかげで、体勢を崩してしまうことなどなかった。

 ドクンっ。

 もう一度。

 もう一度。

 生きているのだと。

 この中で、何かが生きているのだと、それを彼らに向けてアピールしているようにさえ思える。

 声は届かない。

 本当の心さえも。

 だが、懸命に自分の存在と命を、外へ向けようとするのだ。

「出たいのか…」

 真理が、呟く。

 いくつもの含みを感じる音。

 怪訝と疑惑が、特に強く感じられた。

 だが、彼もまたその鼓動が言わんとしていることを汲んでいるのだ。

 問題は。

 真理とこの存在の利害が一致するかどうか、だろう。

 ドクンっ。

 額が、呼応する。

 早紀を、呼んでいるのか。

「あたしがさわれるくらい、近づいてよ」

 貴沙が、勝手に唇を使う。

 真理は動かなかった。

 動かないまま、『早紀』を見る。

 あっ。

 それに、気づいた。

「うん、ちょっとやってみる」

 真理は──早紀の言葉を待ってくれていたのだ。