極東4th

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 鎧なしで涙に近づけば近づくほど、その威圧感は倍増していく。

 真理は、早紀を抱く腕に再び力をこめた。

 しかし、思ったより彼女の身体は緊張していない。

 貴沙が、いまこの身体を支配しているせいだろうか。

 ちらりと、顔を見た。

 唇を薄く開いて、頬を紅潮させ──『早紀』は、光を見ていた。

 威圧感など微塵も感じていない、そして『早紀』の顔だったのだ。

 契約で、鎧と半分つながっているせいか。

 光を前に、彼と早紀とでは感じ方が違うようだった。

 威圧に耐えうる距離で、ようやく真理は飛翔を止める。

 うっすらと、鎧の形をした光が上下した。

 肩を震わせて笑っているかのように。

 そして、同時に気づいた。

 この光の鎧が、この闇の帯の外に出てこないことを。

 いや。

 もしかしたら、出られないのかもしれない。

 涙を閉じ込める──まるで牢獄。

 その帯に触れたいとは、とても思えなかった。

 闇の帯。

 おそらく、魔族の力による何らかの干渉に思えた。

 魔族とは、真理が属している領域だ。

 ということは。

 この力は、魔族によって封じ込めなければならなかったということである。

 なにゆえ、涙を封じる。

「……」

 真理は、ふと考えを止めた。

 ひっかかったことが、あったのだ。

 魔族自身は、蝕が始まったことを気づくことが出来ない、という事実を。

 では、何故。

 何故鎧は、それに気づくことが出来るのか。

 真理は、目を細めた。

 鎧を形作るものの中に、蝕に関する情報があるから、という仮定が頭を掠めたのだ。

 それが、これだというのか。

 鎧の中に──涙自身を封じ込めたというのか!?