---
『痛い!』
貴沙の悲鳴と、早紀の悲鳴はシンクロしていた。
真理に抱き締められてなお、鋭い痛みがはみ出した彼女の身体を襲うのだ。
永遠き続くかと思う痛みに、おかしくなりそうだった。
しかし、強く抱き締める腕が、早紀を正気にとどめる。
痛いのに。
一人ではないのだ。
もう、前とは違うのだ。
『バッカじゃない!?』
早紀のセンチメンタルな感情を、即座に同居人が踏み付ける。
だが、罵倒するだけではなかった。
貴沙は、ただ真理に守られたまま落ちることに抵抗したのだ。
この闇に、何らかの意思があるかもしれないと。
暴こうとしたのだ。
アバキ――初めて感じる瞬間だった。
猛烈な騒音が、頭の中を駆け抜ける。
ほとんどが、聞くに耐えない雑音。
とても、意思があるようには思えなかった。
だが。
一瞬だけ。
全ての音が、消えた。
いや。
すうっと、空を縦に裂く音だけが流れた。
深く暗い井戸に、小さい何かが落ちるような音。
自分たちの、落ちる音かと思った。
そして。
ついに――落ちた。
何物にも受けとめられない空間で、ようやく彼らは止まったのだ。
壊れたエレベータのように、空間に宙づりになったと言った方がいいか。
だがそこには──たったひとつ、光があった。
沢山の闇の帯が集まる中心に、その光はあったのだ。
帯は、上から伸び、下から伸び、四方八方から伸び、光を覆いつくしていた。
隙間などない。
だが、それは光るのだ。
闇など、ものともせずに。
真理は、それに目を奪われているように見えた。
だが、早紀もまた――その光を見たことがある気がしたのだ。
あれは。
貴沙と交ざる意思に戸惑いながら、早紀は記憶を探ろうとした。
「あれは…」
だが、気付いたのは真理が先のようだ。
彼は、こう言ったのだから。
「あれは…蝕の涙か」、と。
『痛い!』
貴沙の悲鳴と、早紀の悲鳴はシンクロしていた。
真理に抱き締められてなお、鋭い痛みがはみ出した彼女の身体を襲うのだ。
永遠き続くかと思う痛みに、おかしくなりそうだった。
しかし、強く抱き締める腕が、早紀を正気にとどめる。
痛いのに。
一人ではないのだ。
もう、前とは違うのだ。
『バッカじゃない!?』
早紀のセンチメンタルな感情を、即座に同居人が踏み付ける。
だが、罵倒するだけではなかった。
貴沙は、ただ真理に守られたまま落ちることに抵抗したのだ。
この闇に、何らかの意思があるかもしれないと。
暴こうとしたのだ。
アバキ――初めて感じる瞬間だった。
猛烈な騒音が、頭の中を駆け抜ける。
ほとんどが、聞くに耐えない雑音。
とても、意思があるようには思えなかった。
だが。
一瞬だけ。
全ての音が、消えた。
いや。
すうっと、空を縦に裂く音だけが流れた。
深く暗い井戸に、小さい何かが落ちるような音。
自分たちの、落ちる音かと思った。
そして。
ついに――落ちた。
何物にも受けとめられない空間で、ようやく彼らは止まったのだ。
壊れたエレベータのように、空間に宙づりになったと言った方がいいか。
だがそこには──たったひとつ、光があった。
沢山の闇の帯が集まる中心に、その光はあったのだ。
帯は、上から伸び、下から伸び、四方八方から伸び、光を覆いつくしていた。
隙間などない。
だが、それは光るのだ。
闇など、ものともせずに。
真理は、それに目を奪われているように見えた。
だが、早紀もまた――その光を見たことがある気がしたのだ。
あれは。
貴沙と交ざる意思に戸惑いながら、早紀は記憶を探ろうとした。
「あれは…」
だが、気付いたのは真理が先のようだ。
彼は、こう言ったのだから。
「あれは…蝕の涙か」、と。


