極東4th

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『痛い!』

 貴沙の悲鳴と、早紀の悲鳴はシンクロしていた。

 真理に抱き締められてなお、鋭い痛みがはみ出した彼女の身体を襲うのだ。

 永遠き続くかと思う痛みに、おかしくなりそうだった。

 しかし、強く抱き締める腕が、早紀を正気にとどめる。

 痛いのに。

 一人ではないのだ。

 もう、前とは違うのだ。

『バッカじゃない!?』

 早紀のセンチメンタルな感情を、即座に同居人が踏み付ける。

 だが、罵倒するだけではなかった。

 貴沙は、ただ真理に守られたまま落ちることに抵抗したのだ。

 この闇に、何らかの意思があるかもしれないと。

 暴こうとしたのだ。

 アバキ――初めて感じる瞬間だった。

 猛烈な騒音が、頭の中を駆け抜ける。

 ほとんどが、聞くに耐えない雑音。

 とても、意思があるようには思えなかった。

 だが。

 一瞬だけ。

 全ての音が、消えた。

 いや。

 すうっと、空を縦に裂く音だけが流れた。

 深く暗い井戸に、小さい何かが落ちるような音。

 自分たちの、落ちる音かと思った。

 そして。

 ついに――落ちた。

 何物にも受けとめられない空間で、ようやく彼らは止まったのだ。

 壊れたエレベータのように、空間に宙づりになったと言った方がいいか。

 だがそこには──たったひとつ、光があった。

 沢山の闇の帯が集まる中心に、その光はあったのだ。

 帯は、上から伸び、下から伸び、四方八方から伸び、光を覆いつくしていた。

 隙間などない。

 だが、それは光るのだ。

 闇など、ものともせずに。

 真理は、それに目を奪われているように見えた。

 だが、早紀もまた――その光を見たことがある気がしたのだ。

 あれは。

 貴沙と交ざる意思に戸惑いながら、早紀は記憶を探ろうとした。

「あれは…」

 だが、気付いたのは真理が先のようだ。

 彼は、こう言ったのだから。

「あれは…蝕の涙か」、と。