極東4th

「ちょっと…逆なんじゃない」

 握った手の向こうが、苦しげに声をあげる。

 どっちがしゃべっているか、すぐに分かるのは真理には楽だった。

 だが、現実問題はとても強い圧迫感の中だ。

 あの世界から、奈落を目指そうとすればするほど、なにもかも飲み込もうとする闇の締め付けが増えるばかりなのだ。

 まるで、彼らを拒むかのように。

 真理は黙ったまま、握る手に力を込めた。

 うっかりにでも手を離せば、二度と早紀と出会えないという危機感だけは、間違いではないだろう。

 ずしり。

 更に重力が増す。

 気を抜けば、圧死できそうなほど。

 さっきから。

 貴沙ばかりが、うるさくしゃべっている。

「早紀…」

 だから、呼び掛けた。

「なんか、メルヘンな事を考えてるわよ、このバカは」

 呆れた返事は貴沙のもの。

「ちが…」

 慌てたように、早紀の声がかぶる。

「いばら姫ねぇ…この先に、お姫様でも待ってるって言うの?」

「違うってば。ただ…こんなに苦しいくらい隠し込むってことは…なにか大事な…」

 一人で喧嘩をする早紀に、真理はわずかに苦しさを忘れた。

 多分、笑いに似た感情が、彼の苦痛を少しだけ上回ったのだ。

 だが。

 突然重力の向きが落下に変わり、圧迫感が鋭い痛みに変わった瞬間――緩んだ思考を捨てた。

「あっ!」

 どっちのものか分からない悲鳴をあげる身体を引き寄せ、自分の身体の内に抱き込む。

 いばらよりも鋭いものが、真理を切り刻む。

 どこに落ちるかなど、分かるはずなどない。

 だが。

 歓迎されていないのだけは、身を持って分かっていた。