変な、感覚だった。
記憶を探ろうとすると、意識が混線する感覚だ。
葵を思い起こそうとすると、年齢の違う二人の彼女が入り乱れる。
周波数が、うまく合わない。
『そのうち慣れるわよ…って、うわ、これはひどいわ』
向こうは、早紀の記憶と混線しているせいか、げんなりした声をあげた。
かなり恥ずかしい。
同じ自分でありながら、真反対の人生を送ってきたのだから。
だが。
記憶が混線しない相手も、いる。
真理、だ。
貴沙が、意識レベルを慣れさせようとしている間に、早紀は彼に向き直っていた。
自分で自分は見えない。
だから、彼の目を通して、早紀は自分を見ようとしたのだ。
真理は、視線を無駄に動かすことはなかった。
ただ、まっすぐに早紀の目を見ている。
そんな彼女の方へ、そして足を進めるのだ。
「帰るぞ…」
手を、差し伸べられる。
言葉が。
また、言葉が死にそうになる。
彼から向けられるひとつひとつが、今までのどれとも違って見えるのだ。
優しいわけではない。
だが、その手は――早紀の意思を待つ手なのだから。
そんな彼女の心の隙間に、貴沙は葵を振り返っていた。
「それじゃ」
貴沙からの言葉は、一言。
「うん…貴沙、未来でね」
小さく、泣き笑いの手が振られる。
そして。
貴沙は、動かなくなった。
早紀に身体のすべてを預けた気配だけが、はっきりと彼女の中に残る。
真理の手は、差し伸べられたまま。
その手が。
その手が、とても冷たいことを知った時――世界は砕けた。
記憶を探ろうとすると、意識が混線する感覚だ。
葵を思い起こそうとすると、年齢の違う二人の彼女が入り乱れる。
周波数が、うまく合わない。
『そのうち慣れるわよ…って、うわ、これはひどいわ』
向こうは、早紀の記憶と混線しているせいか、げんなりした声をあげた。
かなり恥ずかしい。
同じ自分でありながら、真反対の人生を送ってきたのだから。
だが。
記憶が混線しない相手も、いる。
真理、だ。
貴沙が、意識レベルを慣れさせようとしている間に、早紀は彼に向き直っていた。
自分で自分は見えない。
だから、彼の目を通して、早紀は自分を見ようとしたのだ。
真理は、視線を無駄に動かすことはなかった。
ただ、まっすぐに早紀の目を見ている。
そんな彼女の方へ、そして足を進めるのだ。
「帰るぞ…」
手を、差し伸べられる。
言葉が。
また、言葉が死にそうになる。
彼から向けられるひとつひとつが、今までのどれとも違って見えるのだ。
優しいわけではない。
だが、その手は――早紀の意思を待つ手なのだから。
そんな彼女の心の隙間に、貴沙は葵を振り返っていた。
「それじゃ」
貴沙からの言葉は、一言。
「うん…貴沙、未来でね」
小さく、泣き笑いの手が振られる。
そして。
貴沙は、動かなくなった。
早紀に身体のすべてを預けた気配だけが、はっきりと彼女の中に残る。
真理の手は、差し伸べられたまま。
その手が。
その手が、とても冷たいことを知った時――世界は砕けた。


