極東4th

---
「やあ…」

 びくつきながら屋敷に帰った早紀と、前を歩く真理を待っていたのは──修平だった。

 また、なんというか、目が激しく輝いている。

 昨夜のことを思い出して、早紀はいやーな気分になった。

 また何か、あるのだろう。

 あの真理が、自分と一緒にどこかに出かけるなんて話が出るくらいだ。

「今日は…いくんだよね? 準備、見てもいいかな?」

 らんらんとした瞳で、修平は詰め寄ってくる。

「どうぞ」

 真理は、即答だった。

 何の話か分からない早紀は、二人を押しのけて屋敷に入ることも出来ず、後ろで立ち止まったまま。

 昨夜のせいで、すっかり修平恐怖症まで構築されたおかげで、早紀の心休まる場所など、自分の部屋だけとなってしまった。

 早く部屋に戻りたいなあ、と考えていると──真理が、振り返った。

 !!!!

 何と言う衝撃。

 振り返ったのだ。

 あの真理が、わざわざ彼女を認識するために!

 ありえない行動だ。

「8時に、俺の部屋に来い」

 衝撃で動けないでいる早紀に、用件だけ言い置くと、真理はさっさと屋敷の中に入ってしまった。

 言われた言葉が、更に衝撃を上乗せする。

 部屋に来い?

 アリエナイ。

 これまで、一度たりと開けたこともない真理の部屋。

 ノックさえ、したことがないのだ。

 そこに、自分が招かれた。

 真理にとって必要なことなのだろうが、早紀のこれまでの人生では考えられないこと。

 出かけるって言ってたよね。

 玄関の前に立ち尽くしたまま、数々の衝撃を乗り越えながら、早紀はそれを噛み締めてみた。

 制服で、いいのかな。

 数歩踏み出せば、屋敷の中だというのに。

 早紀は、なかなか一歩を踏み出せないままだった。