極東4th

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「大空蝕で死んだと…聞いている」

 真理は、貴沙の言葉には反応するつもりではなかった。

 だが、出てくるはずのない人間の名が口にされたのだ。

『あの人』

 彼女の言う、カシュメルの『あの人』とは、おそらく──真理の父だろう。

 しかし、何故彼女は、イデルグに殺されたのかと聞くのか。

「そう…」

 さっきまでギャンギャンと騒いでいた魔女は、うってかわって沈黙の淵にたたずんでいる。

 そうか。

 忘れそうになるが、貴沙は前の時代を生きた魔女なのだ。

 まだ、父が生きていた時代の。

「ああ…じゃあ」

 はっと。

 はっと、貴沙は顔を上げて早紀を見た。

 早紀の一点を。

「あんた…カシュメルと契約したんだ」

 その言葉に、ほんのわずかの羨望にも似た響きがあった。

 貴沙の瞳は、真理の魔女の額に注がれているようで。

 その意味を、ようやく彼女は理解したのだろう。

「貴沙…カシュメルって」

 葵が何か言おうとするのを、貴沙は即座に手で制した。

「そうよ…あたしはカシュメルの当主に惚れてるわ。そして、イデルグのバカは私に惚れてる。だから殺されたのかって思ったのよ」

 自分の思いは、自分で言わなければ気がすまない。

 だが、先代の死は、まだ彼女の中ではリアリティを持っていないらしい。

 惚れてる、と。

 過去形にならない言葉が、それを証明した。

 事実、まだこの夢の世界を探せば、真理も生きた父と再会できるかもしれないのだから。

 残念ながら、興味をそそられることはなかったが。

 だが、イデルグが父に殺意を抱いていたかもしれない。

 その言葉だけは、とても興味深く真理の中に残った。

「イデルグ卿なら…極東の1stだ」

 真理は、火種をまいてみた。

 好意を寄せていた父に、殺意を持っていたかもしれない男が、現在極東のトップとは、面白くなかろうと。

 ぱちっと、貴沙の中で何かがはぜるように。

 彼女の目の中に──炎が生まれた。