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「大空蝕で死んだと…聞いている」
真理は、貴沙の言葉には反応するつもりではなかった。
だが、出てくるはずのない人間の名が口にされたのだ。
『あの人』
彼女の言う、カシュメルの『あの人』とは、おそらく──真理の父だろう。
しかし、何故彼女は、イデルグに殺されたのかと聞くのか。
「そう…」
さっきまでギャンギャンと騒いでいた魔女は、うってかわって沈黙の淵にたたずんでいる。
そうか。
忘れそうになるが、貴沙は前の時代を生きた魔女なのだ。
まだ、父が生きていた時代の。
「ああ…じゃあ」
はっと。
はっと、貴沙は顔を上げて早紀を見た。
早紀の一点を。
「あんた…カシュメルと契約したんだ」
その言葉に、ほんのわずかの羨望にも似た響きがあった。
貴沙の瞳は、真理の魔女の額に注がれているようで。
その意味を、ようやく彼女は理解したのだろう。
「貴沙…カシュメルって」
葵が何か言おうとするのを、貴沙は即座に手で制した。
「そうよ…あたしはカシュメルの当主に惚れてるわ。そして、イデルグのバカは私に惚れてる。だから殺されたのかって思ったのよ」
自分の思いは、自分で言わなければ気がすまない。
だが、先代の死は、まだ彼女の中ではリアリティを持っていないらしい。
惚れてる、と。
過去形にならない言葉が、それを証明した。
事実、まだこの夢の世界を探せば、真理も生きた父と再会できるかもしれないのだから。
残念ながら、興味をそそられることはなかったが。
だが、イデルグが父に殺意を抱いていたかもしれない。
その言葉だけは、とても興味深く真理の中に残った。
「イデルグ卿なら…極東の1stだ」
真理は、火種をまいてみた。
好意を寄せていた父に、殺意を持っていたかもしれない男が、現在極東のトップとは、面白くなかろうと。
ぱちっと、貴沙の中で何かがはぜるように。
彼女の目の中に──炎が生まれた。
「大空蝕で死んだと…聞いている」
真理は、貴沙の言葉には反応するつもりではなかった。
だが、出てくるはずのない人間の名が口にされたのだ。
『あの人』
彼女の言う、カシュメルの『あの人』とは、おそらく──真理の父だろう。
しかし、何故彼女は、イデルグに殺されたのかと聞くのか。
「そう…」
さっきまでギャンギャンと騒いでいた魔女は、うってかわって沈黙の淵にたたずんでいる。
そうか。
忘れそうになるが、貴沙は前の時代を生きた魔女なのだ。
まだ、父が生きていた時代の。
「ああ…じゃあ」
はっと。
はっと、貴沙は顔を上げて早紀を見た。
早紀の一点を。
「あんた…カシュメルと契約したんだ」
その言葉に、ほんのわずかの羨望にも似た響きがあった。
貴沙の瞳は、真理の魔女の額に注がれているようで。
その意味を、ようやく彼女は理解したのだろう。
「貴沙…カシュメルって」
葵が何か言おうとするのを、貴沙は即座に手で制した。
「そうよ…あたしはカシュメルの当主に惚れてるわ。そして、イデルグのバカは私に惚れてる。だから殺されたのかって思ったのよ」
自分の思いは、自分で言わなければ気がすまない。
だが、先代の死は、まだ彼女の中ではリアリティを持っていないらしい。
惚れてる、と。
過去形にならない言葉が、それを証明した。
事実、まだこの夢の世界を探せば、真理も生きた父と再会できるかもしれないのだから。
残念ながら、興味をそそられることはなかったが。
だが、イデルグが父に殺意を抱いていたかもしれない。
その言葉だけは、とても興味深く真理の中に残った。
「イデルグ卿なら…極東の1stだ」
真理は、火種をまいてみた。
好意を寄せていた父に、殺意を持っていたかもしれない男が、現在極東のトップとは、面白くなかろうと。
ぱちっと、貴沙の中で何かがはぜるように。
彼女の目の中に──炎が生まれた。


