極東4th

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 そうか。

 貴沙へと向き直った早紀の髪を見ながら、真理はようやく自分の思いを理解していた。

 強くあれ、と。

 早紀にそうあれと、自分は願っていたのかと。

 願う。

 それは、魔族にとってはあまりに儚く無意味なものだ。

 強い者は、願う必要などない。

 欲しいものは、自分で手に入れるからだ。

 なのに。

 手に入らないものもある。

 イデルグでさえ、貴沙を手に入れられなかったように。

 魔女の心ばかりは、どんなに強い魔族でもどんなに手を尽くしても、最後は『願う』という頼りないものになってしまうのだ。

 それを、真理は早紀という魔女で、生まれて初めて知った。

 そして。

 その感情が、結局のところ──イデルグと同じ道につながっていることを、ようやく理解したのである。

 だから。

 抱きしめた。

 必要のない、抱擁のはずだった。

 だが、真理はそうしたかったのだ。

 早紀を、抱きしめたかった。

 そうしたら。

 そうしたら早紀はまるで、枯れかけた植物が水を浴びたかのように、力を取り戻していったのだ。

 うなだれた首が持ち上がる。

 抱き返され、真理はまたも驚かされる。

 いままで、しがみつかれこそすれ、こんな形で早紀に抱かれるのは初めてだったからだ。

 その腕には、彼女の意思を容易に感じることが出来た。

 ああ、そうか。

 真理は、自嘲した。

 早紀を強くするのは──本当はこんなに簡単なことだったのか、と。