極東4th

「また…気持ち悪いのが来たわね」

 貴沙は、自分を支えようとする葵を払いのけて、しっかりと二本の足を踏みしめる。

 その姿を、真理さえも、多少不思議な気持ちで見ていたのだ。

 さっきは、早紀を引きはがすことを最優先にしていたため、じっくり見てはいなかった。

 これが、早紀の元となった魔女なのだ、と。

 悪趣味なことをする。

 真理は、視線だけをしばし斜め上に向けた。

 そこにいるはずもない、鎧に対しての一睨みだ。

 元は同じものを二つ並べて、どうしたいというのか。

 どちらかが死んでも、いい結果にはならないだろうに。

「……」

 そうか。

 そして、ふと自分が考えついたことに──自分で驚くこととなる。

 とても、魔族らしくないものに感じたからだ。

 ここに二人揃っているというのならば、と。

 早紀と貴沙が、別々にいるというのなら。

 もう一つ、やり方があるのではないか、と。

「早紀…」

 支えた身体に向けて、真理は声をかけた。

 自ら立ち向かい続けようとする貴沙の前で、すがらずにはいられない女がいる。

 その彼女を支える手に、少しだけ力を込めた。

 びくっと、早紀がそれに反応する。

「殺す以外の方法が……ある」

 本当は、それが可能なのかは分からない。

 だが、可能かどうかは考える必要はないのだ。

 ただ。

 ただ早紀が、その選択を自ら選べるかどうか、という事だけ。

 振り返らないままの彼女を奮い立たせるように、真理はもう少し支える手に力を増やす。

「受け入れて…ひとつになることだ」

 刹那。

 腕の中の肉体は──石のごとく固くなった。