早紀が、いた。
空間の認識に、一瞬時間が必要だったが、軽く頭を振った直後、真理のすぐ前に早紀が立っているのが分かる。
ただし、背中を向けて。
彼女が、進もうとする先にいるのは──
ありえない、はない。
ここは、鎧の中の世界。
いや、もっと深く違う次元なのだ。
でなければ、彼が早紀を見失うはずなどないのだから。
ここで、向こうの常識など通用するはずがなかった。
だから──貴沙と呼ばれる魔女がいても、おかしくもなんともないのだ。
だが。
あの早紀から、悪意が漂っている。
その手を、悪意を持って貴沙に伸ばそうとしていた。
早紀は、貴沙で。
貴沙は、早紀なのだ。
その表裏一体の、同じ生き物を末梢しようとしているのだと、真理は瞬間的に理解した。
危険な行動だった。
もし、この世界が過去の現実につながっているとするならば、それは自殺にも等しい行動なのだから。
まだ。
真理は、足を踏み出した。
まだ、失うわけにはいかない。
その肩を。
掴んで。
引き戻す。
悪意があったことさえ疑わしいほど軽く、彼女は自分の元へと帰ってきた。
「やめておけ…」
言葉に、よろける身体。
その身体を、抱きとめる。
「…しん…り」
震える声。
「ああ…」
自分を呼ぶ、しかし──真理の内側を震わせる声だった。
空間の認識に、一瞬時間が必要だったが、軽く頭を振った直後、真理のすぐ前に早紀が立っているのが分かる。
ただし、背中を向けて。
彼女が、進もうとする先にいるのは──
ありえない、はない。
ここは、鎧の中の世界。
いや、もっと深く違う次元なのだ。
でなければ、彼が早紀を見失うはずなどないのだから。
ここで、向こうの常識など通用するはずがなかった。
だから──貴沙と呼ばれる魔女がいても、おかしくもなんともないのだ。
だが。
あの早紀から、悪意が漂っている。
その手を、悪意を持って貴沙に伸ばそうとしていた。
早紀は、貴沙で。
貴沙は、早紀なのだ。
その表裏一体の、同じ生き物を末梢しようとしているのだと、真理は瞬間的に理解した。
危険な行動だった。
もし、この世界が過去の現実につながっているとするならば、それは自殺にも等しい行動なのだから。
まだ。
真理は、足を踏み出した。
まだ、失うわけにはいかない。
その肩を。
掴んで。
引き戻す。
悪意があったことさえ疑わしいほど軽く、彼女は自分の元へと帰ってきた。
「やめておけ…」
言葉に、よろける身体。
その身体を、抱きとめる。
「…しん…り」
震える声。
「ああ…」
自分を呼ぶ、しかし──真理の内側を震わせる声だった。


