極東4th

 食われる。

 その感触を表現するならば、それが一番近かっただろう。

 いつも、早紀のいる鎧に入る時は、飲まれる感じだが、今日のこれは違う。

 兜を掴んでいる手から、まるで咀嚼されるように引き込まれていくのだ。

 だが。

 まだ、いまならば手を引き抜ける。

 早紀を助けに行きたくないなら、手を抜けばいいと。

 その選択権を、にやにや笑いながら真理に投げ与えているつもりなのだ。

 この鎧は。

 だが、行くしかない。

 早紀が消えたままでは、真理に鎧は使えないのだ。

 それに。

 彼の意識の前方を──早紀の映像が掠める。

 何度か。

 何度かこれまで、彼女の存在は真理を強く揺さぶった。

 火花のように一瞬ずつ、何度か。

 その火花の瞬間に見えた早紀は、あまり自覚はしたくないが、彼に強く焼き付いているのだ。

 それが何なのか、まだ真理は掴めずにいる。

「行ってやろう…」

 肘まで食われたところで、真理は間近にある鎧の兜に向かって、上段から言い放った。

『そうかそうか』

 真理を噛み砕きながら、鎧は愉悦の響きを溢れさせる。

 その鎧の金属が、顔の目の前まで近づいた。

 顔に噛みつかれる直前。

『そのまま…』

 迫りくる漆黒。

『そのまま…奈落までいってこい』

 がぶり。