極東4th

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 鎧が──笑った。

 カタカタと震えるように、しかし真理には笑ったのだと分かった。

 早紀のいなくなった抜け殻のそれは、彼を拒みながら彼を笑うのだ。

 そして、分かった。

 早紀の存在が消えた原因は、おそらく鎧のせいだ、と。

 その兜の顔面を。

 真理は、がしっと鷲掴む。

 ふざけるな。

 早紀は、非常に不安定だった。

 真理に依存し、それでしか生きていられないという歪んだ状態で。

 そんな早紀を、一体どこへ隠し込んだというのか。

『お前だろ?』

 兜を掴んだ手のひら全体に伝わるように、音が響いた。

 いや、音ではなかったのだろう。

 しかし、意思を感じる振動。

 その振動が、真理の骨をダイレクトに震わせるのだ。

 まるで、音のように。

『お前が、あの女を絶望に突き落としたんだろ?』

「違う」

 骨への震えを、彼は即座に否定した。

 絶望に落としたかったわけではない。

 依存のみの生という歪んだ糸を、切りたかっただけなのだ。

 そんな感情を向けられるのが──嫌だった。

 嫌悪、とは違う。

 嫌悪ならば、真理は側にも寄せなかっただろう。

 そうではなく、ただ嫌だったのだ。

『そうか?』

 鎧は、笑う。

『それなら、助けに行くか?』

 そして、奇妙なことを言った。

 助けに。

 まるで早紀が、危機に陥っているかのように。

『随分深いところまで落ちたから…一人では帰ってこれないだろうな』

 鎧は。

 本当に、おかしくて仕方がないように大笑いをしたのだった。