極東4th

 ハイクラスの真理は、一日を嫌な気分で過ごした。

 嫌な気分。

 いや、違う。

 朝は嫌だった。

 昼に、それは怪訝に変わり。

 学校が終わる時間には、憮然に変わっていたのだ。

 耳の早い生徒たちが、契約印のことを触れ回るかと思っていたのだ。

 しかし。

 下校の時間まで、それらは噂すら真理の耳に入ってはこなかった。

 まあ、わざわざロークラスを見に行く生徒もいないだろうから、今はこんなものなのかもしれない。

 憮然としたまま校門に向かうと、車が待っていた。

 中には、既に早紀が乗っているようだ。

 初日の学校は、やりすごした。

 しかし、真実の本番はここからだ。

 後部座席に乗り込むと、真理から逃げるように早紀は少し奥へと動く。

 そんな、往生際の悪い女に。

「今夜、出かける」

 一言、伝えておく。

 きょとんとした目が、こっちに向けられた。

 不思議そうな顔。

「は、はあ…いってらっしゃい」

 そして。

 あさっての、とぼけた言葉。

「お前も、だ」

 真理は、目に冷気をこめてしまった。

 びくうっと、早紀が跳ねる。

「わ、私? ど、どこに?」

 きょろきょろと、落ち着かなく周りを見回す。

 どんなに彼女が挙動不審になろうが、出かける先では何ら問題にはならない。

 それだけは、真理の救いか。

 出かけるだけなら、な。

 さて。

「あっち」を、どう自分だけで乗り切る、か。

 真理の悩みは、尽きなかった。