極東4th

「何言ってるの? 頭大丈夫?」

 貴沙は、まったく取り合う様子はない。

 珠を握る手を解く様子もなく、立ち上がった早紀を真っ向から睨みつける。

「あなた、いまからその珠を飲むんでしょ?」

 早紀は、彼女の手元へと視線を落とした。

 知っている。

「飲むと…力が裏返る。そう思ってるんでしょ?」

 知っていることを貴沙に告げることが、一体何につながるか──そんな後のことは考えもしないで、早紀は言葉を続ける。

 貴沙の目に、前以上の警戒を感じた。

 だが、その警戒が戸惑いに変わる。

 ああ、そうか。

 そう。

 彼女の能力は、『暴き』。

 おそらく、早紀を暴こうとしたのだ。

 暴けなかったのか、暴いたのか。

 その結果など、どちらでもいい。

 どちらにせよ、貴沙は戸惑わざるを得ないのだ。

 暴けなかった事実か、暴いた内容か。

 暴けたのなら、こんなに滑稽なことはない。

 早紀を暴いたところで、結局は自分だと思い知るだけなのだから。

「それを飲んだら…こうなるのよ」

 彼女は、笑いながら両手を広げた。

 自分をよく見せたのだ。

 美しくもなく、華やかでもない──ヒキガエルの自分を。

「能力は裏返ったわ…でも、魔力そのものは裏返らなかった」

 貴沙が、一歩下がるのを見ながら、早紀は伝える。

 そう。

 伝えていたのだ。

 自分でいたいと、どんなに逃げ回っただろう。

 けれど、真理に守ってもらおうとすがりついて、憐れまれていることに気づいた。

 結局──彼に、お姫様ではない、ヒキガエルの姿を鏡で見せられてしまったのだ。

 真理の目を、思い出す。

 ああ、そうか。

 お姫様として、見て欲しかったのだ、自分は。

 涙が。

 あふれた。