極東4th

 痛い。

 床に打ちつけた身体が。

 とっさについた手が。

 ジンジンと痛みを伝えてくる。

 その痛みが、早紀に教えてくれるのだ。

 いま彼女のいる光景が──現実だと。

 あ。

 鎧の男の言葉が甦る。

『戦ってこい』、と。

 過去と、戦ってこいと。

 そう彼は言うのか。

 そしてもう一つ、男は言った。

『死×死』の話を。

 少し前のことだった。

 意味深に言われたその言葉は、もしかしてこの事とつながっていたのではないか。

 早紀は、二度死んだ。

 死んだことが大事なのではない。

 同じものを二つ掛け合わせる──それが、鍵ではないのか。

 いま。

 早紀は、夢の中の鎧の世界で、彼に更に夢に突き落とされた。

 夢の中で見る夢。

 それは、『夢×夢』ということではないのだろうか。

 答えは。

 その答えは。

「何とか言ったらどうなの? このグズ!」

 貴沙が、上から彼女を容赦なく罵倒する。

「は…ははは…」

 早紀は、笑ってしまった。

 床に座り込んだまま、笑いが止められなかった。

 ゆっくりと。

 本当にゆっくりと、早紀は立ち上がる。

 椅子を奪い合う相手が、いま彼女の目の前にいるのだ。

 それが、悲しいほどおかしくてしょうがなかった。

「私は…あなたよ。あなたは…私」

 知っているのは私──知らないのは、あなた。