極東4th

 あわれ、まれた。

 言葉をそれ以上考えられないほど、早紀の頭の中は真っ白に塗りつぶされる。

 そう。

 いまの早紀は──かわいそうなのだ。

 その『かわいそう』が、鋭く刺さったのである。

 あ、あ。

 すがった手を。

 離す。

 真理が、自分を見ている。

 横たわったまま、早紀を見ている。

 その目にあるのは、憐れみというものなのだと。

 そう、彼は言うのだ。

 身体を、引く。

 完全に彼から離れる。

 分かっていたではないか。

 何を自分は、真理に期待をしていたのか。

 かわいそうなヒキガエルを、憐れみ以外で保護しようなんて考えるものはいないではないか。

 あっ…あ…ああああああああああ!!!

 ぐちゃぐちゃに、なっていく。

 頭の中も、そして魂の中も。

 暗いはずの視界で、白や赤や紫の光が点滅する。

 猛りに任せて叫びだしたい衝動と、吐き気がこみ上げる。

 狂って、しまうかと思った。

 真理が指を伸ばさなければ、狂ってしまったかもしれない。

 額で描かれる円。

 早紀は──狂うための生身を失った。

 だが。

 いつもとは違った。

 固い鎧の中に溶けながら。

 早紀は。

 もっと深いところまで、溶けていったのだった。