極東4th

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 真理は、隣の座席を見た。

 そこに、早紀がいる。

 毎朝、同じように続く登校風景なのだが、いつもと違うことを真理は感じていた。

 契約をしたせいだろうか。

 早紀が、どんなにちいさくちいさくなって気配を消してしまおうとしても、すぐそこに彼女が存在していることが伝わってくるのだ。

 いつもなら、2秒とかからずに忘れてしまえるというのに。

 今日の早紀は、更に小さくなろうとしているようだった。

 額の契約印のせいだろう。

 朝から、大きな絆創膏を探して走り回っていたと、使用人が言っていた。

 まあ、契約印については、真理も気になるところがある。

 学校での、周囲の反応だ。

 魔族の学校である。

 だが、同級とは言え、真理と早紀は幼少から、ずっとクラスは違った。

 真理はハイクラスで、家柄的にも同等以上がそろい踏みだ。

 早紀は、ロークラス。

 それが、今回は幸いするかもしれない。

 家柄に無縁な魔族も多いためだ。

 正直。

 一部、ソリの合わないハイクラスの連中に、早紀の契約印を見られたくないというのが、真理の気持ちだった。

 他の種族には、契約印は見えないというが、あいにくと同種族にそれを隠す方法がないのだ。

 絶対に、真理か早紀につっかかってくるに違いない。

 真理はいい。

 あしらいもできるし、黙らせ方も分かっている。

 問題は。

 この、影の薄い女。

 ハイクラスの連中にとっては、これほどのカモはいないだろう。

 特化した血も能力もない、ただ魔女というだけの存在。

 面倒なことにならないといいが。

 真理は、空気を動かさないほど静かに息を吐いた。

 ちらりと、こちらを見る早紀。

 学校もそうだが。

 真理には、他にもこの契約者についての悩ましい点があった。

 だから、魔女を使いたくなかったんだが。

 後悔の言葉など、どこにも届くはずがなかった。