極東4th

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「お話があります…」

 来たのは──タミだった。

 放課後。

 帰ろうと立ち上がった真理の先に、彼女が現れたのだ。

 好都合である。

 どこまでエンドリン家に動きがあるのか、多少は探れるかもしれない。

 ただ。

 軽く周囲を見やる。

 こんな学校で、話せる内容とは思えなかった。

 ちらりと、タミも視線を動かす。

「うちの屋敷に来るといい」

 彼女が、次の言葉を紡ぐより先に、彼は自分の意向を伝えた。

 自分に有利になる先手を打ったのだ。

 これならば、早紀も連れて帰ることが出来、安全圏に置いておける。

 エンドリン家が、何の企みを持っているか分からないのだから。

 しばしの沈黙の後。

「…兄も同行してよろしければ」

 さすがに、一人で来る気にはならなかったようだ。

 だが。

 おかしな真似をする気がないことも、これで分かった。

「結構…」

 言い置くと、真理は歩き出す。

 もはや彼女が、真理と同じ車に乗るとは思えない。

 後から兄と合流して、屋敷に来るだろう。

 タミをかわし歩みを進めると、早紀がこちらに向かってくるのが見える。

 その足が、止まった。

 真理の向こう側を見ている。

 タミが見えたのだろう。

 そして、きっとタミも早紀を見ているのだ。

 動きを促すべく、ゆっくりと彼女の腕に触れると、電流が走ったかのように、はっと彼女は顔を上げた。

 不安定な瞳と唇。

 早紀は、何もかもから逃げようとした。

 鎧になることから逃げ、自分の価値を見失って逃げ──そして、いまは貴沙から逃げている。

 そして今、逃げの反動で、真理にすがるのだ。

 すがりつかれることでは、彼の心は満たされなかった。

 早紀の好意は、その中にあるはずなのに。

 おそらく。

 自分は、もっと違うものを求めているのだ。