極東4th

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 双子の片方が死んだ──かもしれない。

 その事実は、早紀を恐れさせた。

 別人格の二人だが、双子だ。

 どこかで、彼らをセットで見ていたことは、否定できなかった。

 一人の中の、二つの人格のように。

 その片方が。

 消された。

 たとえ生きていたとしても、もうおそらく前と同じではありえない。

 一つしかない席を、奪い合って負けたのだから。

 それが、自分と貴沙に似ている気がした。

 席は、ひとつしかない。

 座れるのは、自分か貴沙。

 最初に貴沙が座っていたところを、次に自分が座った。

 じゃあ次は?

 貴沙には、まだチャンスがある。

 彼女の中の、宝珠を取りさえすればいいのだから。

 そして、今度彼女にチャンスが回ったら──自分のチャンスは、もう二度と回ってこない気がしたのだ。

 そう思ったら。

 真理のシャツを握っていた。

 目の前にある、早紀の最後の綱。

 彼が、『早紀』を望んでくれる限り、貴沙の番は回ってこない。

 それだけが、彼女のすがるところなのだ。

「大丈夫だ…」

 声が。

 真理の声が、降ってくる。

 彼女の魂を、震えさせるほどの音。

 彼は、こんなに誰かを安心させるような言葉を吐く人ではない。

 分かっていたからこそ、じっと真理を見てしまう。

 何故、そんなことを言ってくれるのか、と。

 何故、早紀をとどめてくれようとしているのか、と。

 どう、して。

 声に出来ずに、唇だけ動いた。

 声にしてしまえば、失望する返事がきそうで。

 だが、彼は早紀の唇の動きを見ていた。

 言葉と同じ意味は、きっと届いたはずだ。

 だが。

 真理は、ゆっくりと視線を斜め上に向けた。

 次の授業の、始業ベルが鳴ったのだ。