極東4th

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「ふぅん…」

 トゥーイは、ひとつの目で真理を面白くなさそうに見ていた。

 早紀は、彼を見つけるやいなや、席を立ってかけてくる。

 そして、真理の陰に隠れるのだ。

「そんな姿を見ると、この間の君の話もあながち嘘ではなく思えてくるね…けど、本当に信じたわけじゃないよ」

 トゥーイは、一瞬だけ視線を零子に投げる。

 引き上げの合図だったのだろう。

 二人は、ロークラスの教室を出て行きかけた。

 入口の真理の側で、一度立ち止まる。

「主人というよりは…ナイト様だな、君はまるで」

 クッと。

 挑発気味に、トゥーイが笑った。

 こめかみが、ぴりっとする瞬間だ。

 挑発だと分かっているからこそ、それ以上感情を荒れさせずにすむ。

 捨て台詞も済んだようなので、引き上げるだろう。

 真理が、そう思った時。

 進みかけた足を、トゥーイはもう一度止めるではないか。

 まだあるのか。

 うんざりしつつ、真理はあらぬところを見た。

「そうそう…決着がついたよ」

 だが、言われた言葉には、心当たりがなかった。

 何の話だ。

 視線だけで怪訝を伝えると、トゥーイは低く笑って見せる。

「何って…イデルグ家の家督相続だよ」

 将来の、僕らのライバルが決まったんだよ。

 瞬間。

 脳裏に、あの双子が甦る。

 決着がついた──どちらかが死んだ、ということか。

「どっちが継いだかは…自分の目で確かめるといい」

 そこまで言い置いて、ようやくトゥーイは去った。

 双子のことを思いめぐらそうとしたが、抵抗感に止められた。

 早紀が、彼のシャツを握っている。

 そして自分を見ている。

 双子の決着に、何か思うところでもあったのか。

 もしくは、トゥーイらの訪問そのものの影響か。
 
 その瞳は、とても何かを恐れていた。

「大丈夫だ…」

 気づいたら──そう語りかけていた。