極東4th

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「まさか、当主になつくとはな」

 鎧の出迎えの言葉は、面白くなさそうなもの。

 不快というよりは、つまらないという響きだ。

「別に…いいでしょ」

 早紀は警戒して、鎧と距離を取る。

 最近の眠りの中では、ずっとこんな感じだ。

 彼が自分を害すると、考えているわけではない。

 彼がまた、貴沙の記憶を見せるのではないか──それを恐れているのだ。

 もう、あんなものはいらなかった。

 自分はただ、早紀でありたい。

 早紀であることを脅かすものに、近づきたくないのだ。

「馬鹿な奴だ…」

 その警戒を、鎧は低い笑いで蹴り飛ばす。

「せっかく、オレがきっかけを作ってやってんのに…見たくない、考えない、知ろうとしない」

 やれやれ。

 うんざりした声を、わざと作っている気がする。

 早紀を、挑発しようとしているような。

 しかし、言っている意味なんか、分かるはずもない。

「死×死の意味は…分かっただろう?」

 なにを。

 鎧は、何を言おうとしているのか。

 近づきながら、上から見下ろしながら、彼女に何かを考えさせようとしている。

「わ…私が何かを知ったところで…どうなるの。あなたは、力さえあればそれでいいんでしょ」

 憑き魔女が、貴沙でも早紀でもいいというのならば。

 それでよいのならば、わざわざ彼女をかき回すようなことをしなくていいのだ。

 何故、こんな禅問答のようなことを言うのか。

 鎧は──足を止めた。

 早紀を見下ろす。

 漏らされたのは、吐息。

「じゃあ…お前さんに得になることを、ひとつ教えてやるよ」

 そして、言葉。

「どうしようもなく追い詰められたら…鎧に逃げ込め」

 意味なんか理解できないうちに──目が覚めた。