極東4th

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 何が起きたか、分からなかった。

 真理は、扉を見たまま立ち止まっていただけだ。

 その背中に。

 何かが触れた。

 そっと。

 本当に、そっと。

 小さい接触。

 彼の後ろにいるのは、早紀一人。

 彼女が、手で真理の背中に触れているのだ。

「………」

『その』感覚を、彼は思考にできなかった。

 不快ではない。

 不快ならば、すぐに振り払っている。

 そうではなくて。

 触れている手の上の方──肩のあたりに、今度は別の何かが触れる。

 微かな息遣いが、近くにある気がした。

 早紀が、頭を押しあてたのだろう。

 そうか。

 不可解な感覚の理由に、真理は思い当たった。

 これまで、彼を避け続けた相手が、自分から触れてきた事実に驚いたのだ、と。

 あの早紀が。

 あの早紀が、自分から真理に触れてきたのだ。

 何かが、伝わってくる。

 背中と肩から、彼女の何かが。

「真理の…鎧として生きるわ」

 その何かが、音になる。

 小さな小さな、ため息のような音。

 それは、微かに真理の産毛をざわめかせた。

 分かった。

 早紀が自分に向けているのは、好意だ。

 真理がこれまで、彼女からむしりとろうとしたその感情が、いますぐ後ろにある。

「当然だ」

 彼もまた。

 貴沙と早紀という二枚のカードから、早紀をひいたのだ。

「好きにしろ」という言葉の瞬間に。