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何が起きたか、分からなかった。
真理は、扉を見たまま立ち止まっていただけだ。
その背中に。
何かが触れた。
そっと。
本当に、そっと。
小さい接触。
彼の後ろにいるのは、早紀一人。
彼女が、手で真理の背中に触れているのだ。
「………」
『その』感覚を、彼は思考にできなかった。
不快ではない。
不快ならば、すぐに振り払っている。
そうではなくて。
触れている手の上の方──肩のあたりに、今度は別の何かが触れる。
微かな息遣いが、近くにある気がした。
早紀が、頭を押しあてたのだろう。
そうか。
不可解な感覚の理由に、真理は思い当たった。
これまで、彼を避け続けた相手が、自分から触れてきた事実に驚いたのだ、と。
あの早紀が。
あの早紀が、自分から真理に触れてきたのだ。
何かが、伝わってくる。
背中と肩から、彼女の何かが。
「真理の…鎧として生きるわ」
その何かが、音になる。
小さな小さな、ため息のような音。
それは、微かに真理の産毛をざわめかせた。
分かった。
早紀が自分に向けているのは、好意だ。
真理がこれまで、彼女からむしりとろうとしたその感情が、いますぐ後ろにある。
「当然だ」
彼もまた。
貴沙と早紀という二枚のカードから、早紀をひいたのだ。
「好きにしろ」という言葉の瞬間に。
何が起きたか、分からなかった。
真理は、扉を見たまま立ち止まっていただけだ。
その背中に。
何かが触れた。
そっと。
本当に、そっと。
小さい接触。
彼の後ろにいるのは、早紀一人。
彼女が、手で真理の背中に触れているのだ。
「………」
『その』感覚を、彼は思考にできなかった。
不快ではない。
不快ならば、すぐに振り払っている。
そうではなくて。
触れている手の上の方──肩のあたりに、今度は別の何かが触れる。
微かな息遣いが、近くにある気がした。
早紀が、頭を押しあてたのだろう。
そうか。
不可解な感覚の理由に、真理は思い当たった。
これまで、彼を避け続けた相手が、自分から触れてきた事実に驚いたのだ、と。
あの早紀が。
あの早紀が、自分から真理に触れてきたのだ。
何かが、伝わってくる。
背中と肩から、彼女の何かが。
「真理の…鎧として生きるわ」
その何かが、音になる。
小さな小さな、ため息のような音。
それは、微かに真理の産毛をざわめかせた。
分かった。
早紀が自分に向けているのは、好意だ。
真理がこれまで、彼女からむしりとろうとしたその感情が、いますぐ後ろにある。
「当然だ」
彼もまた。
貴沙と早紀という二枚のカードから、早紀をひいたのだ。
「好きにしろ」という言葉の瞬間に。


