「私…このままでいたい」
鎧から生身の身体に戻った早紀は、自分に印をつけた男に、そう言ってみる。
早紀の部屋。
ついさっき、バルコニーに舞い降りたのだ。
長い散歩だった。
雲海に日が沈む様を、生まれて初めて早紀は見たのだ。
その間中。
真理は黙っていたし、早紀もステルスで遮断したままだった。
ただ。
お互い黙ったままだが、ずっと側にいた気がしたのだ。
同じ太陽を見ていた。
なにかが、真理とつながったわけではない。
でも、彼が自分を必要としてくれている気がしたのだ。
早紀である自分を。
本当は、貴沙でもいいのかもしれない。
どっちだって、彼が鎧として使えたら関係ないのかも。
だから。
早紀として生まれて初めて、相手を試そうとした。
その言葉が──「私…このままでいたい」
持てあますほど面倒な彼女に、真理はなんと答えるのか。
彼は、自分を見ている。
怒りの冷気は散歩中に消えたのか、なりをひそめていた。
ただ、静かに早紀を見ている。
その身体が。
すぅっと歩き出す。
部屋を出て行くつもりなのだ。
あっと。
早紀は、彼を視線で追いかけていた。
返事もせずに、行ってしまうのか。
彼女にとって、この世で一番大事な言葉だったのに。
崖っぷちに立った状態で、どっちに進むかを決める権利を真理に託したというのに。
待って。
待って、いかないで。
伸ばしかけた手の向こうで、真理は──足を止めた。
「好きにすればいい」
権利が、投げ戻された。
静かな真理の唇から、振り返りもせずにこぼれた音。
瞬間。
早紀の身体に、しびれが走った。
ああ、ああ。
好きにすればいい、と。
早紀でいたければ、早紀でいていいのだと、そう言われたのだ。
どうでもいい、ではなかった。
鎧から生身の身体に戻った早紀は、自分に印をつけた男に、そう言ってみる。
早紀の部屋。
ついさっき、バルコニーに舞い降りたのだ。
長い散歩だった。
雲海に日が沈む様を、生まれて初めて早紀は見たのだ。
その間中。
真理は黙っていたし、早紀もステルスで遮断したままだった。
ただ。
お互い黙ったままだが、ずっと側にいた気がしたのだ。
同じ太陽を見ていた。
なにかが、真理とつながったわけではない。
でも、彼が自分を必要としてくれている気がしたのだ。
早紀である自分を。
本当は、貴沙でもいいのかもしれない。
どっちだって、彼が鎧として使えたら関係ないのかも。
だから。
早紀として生まれて初めて、相手を試そうとした。
その言葉が──「私…このままでいたい」
持てあますほど面倒な彼女に、真理はなんと答えるのか。
彼は、自分を見ている。
怒りの冷気は散歩中に消えたのか、なりをひそめていた。
ただ、静かに早紀を見ている。
その身体が。
すぅっと歩き出す。
部屋を出て行くつもりなのだ。
あっと。
早紀は、彼を視線で追いかけていた。
返事もせずに、行ってしまうのか。
彼女にとって、この世で一番大事な言葉だったのに。
崖っぷちに立った状態で、どっちに進むかを決める権利を真理に託したというのに。
待って。
待って、いかないで。
伸ばしかけた手の向こうで、真理は──足を止めた。
「好きにすればいい」
権利が、投げ戻された。
静かな真理の唇から、振り返りもせずにこぼれた音。
瞬間。
早紀の身体に、しびれが走った。
ああ、ああ。
好きにすればいい、と。
早紀でいたければ、早紀でいていいのだと、そう言われたのだ。
どうでもいい、ではなかった。


